すみだモダン×スタイルストア
すみだの地域と文化を取り入れたIKIJIが世界にファンを持つ理由
IKIJI(イキジ)は2011年に墨田区のものづくり企業4社により、スタートしたファッションブランドです。それぞれの企業が強みを活かし、1つのブランドを作り上げています。今回は、IKIJIのプロジェクトをとりまとめている精巧株式会社の近江さんに、ブランド立ち上げの経緯と、今後の展望についてお話を伺いました。
世界に負けないブランドを作るため、協業を選択
ーIKIJIは、国内問わず様々なトップブランドのカットソーを手掛ける精巧株式会社と、メーカーの布帛シャツといえばここといわれるウィンスロップ株式会社、ニットのテルタ株式会社、卓越した技法をもつ革職人を擁する株式会社二宮五郎商店の4社で共同で立ち上げたブランドですよね。複数の企業との協業運営という、とても珍しいスタイルだと思いますが、立ち上げに至った経緯ついて教えてください。
2012年5月の東京スカイツリー開業に向けて、墨田区で「すみだ地域ブランド戦略推進検討委員会」が発足し、有識者の方と墨田区から4事業者が委員に選別されたのですが、その中の1社が弊社でした。委員会で、墨田区の良さをどう外に向けてPRしていくかを話し合うことがきっかけで、ファクトリー発のブランドを立ち上げたいという思いを強く持つようになりました。
私たちが普段目にする海外のハイブランドの中にも、元はファクトリーからスタートし、いまやメゾンといわれる有名ブランドになっているところが多くありますし、すみだの地域には文化があって、そこから産業が生まれた事に意味があるとも考えていました。なので、地域の文化や歴史を入れたブランドを作りたいという思いもありました。
私たちはカットソーメーカーですが、ファッションブランドとして立ち上げるには、コートやバッグ、靴など他のアイテムを準備していく必要があります。それぞれのアイテムに特化した技術力の高いメーカーと共同でブランドを作ったら、世界に通用する高品質なものが提供できると考えたんです。そして生まれたのがIKIJIになります。
海外で好評の理由は和のモダン化
ーIKIJIは日本だけではなく海外のお客様も多いと聞きました。
取り扱い店舗は日本よりも海外の方が多いです。どこの国が多いという偏りがなく、アメリカ、ヨーロッパなど様々な国で取り扱っていただいています。
ー海外のお客様が多い理由はどういった点にあるのでしょうか。
IKIJIの「和のモダン化」というコンセプトに魅力を感じていただいている方が多いからだと思います。
上質でシンプルなデザインのIKIJI のアイテムたちですが、ぱっと目に入るロゴや両国にあるSHOPからは、揺るがない軸があるのを感じます。
ブランドのロゴは、「江戸で流行りの光琳梅を四弁にして目鼻をつければお多福面。甘酒飲ませれば、紅梅色。」という江戸の浮世絵師・山東京伝が考案した「面の皮梅」がモチーフになっています。
和の要素を取り入れつつ、日々の生活に取り入れられるデザインのため、海外の方々のライフスタイルにも合うのがIKIJIの特徴です。カジュアルだけど綺麗、ベーシックだけど上質といったところが評価されているように感じています。
課題もある中考える、業界そしてブランドのこれから
ー今年で13年目を迎えたIKIJI。コロナ禍で人々のライフスタイルの変化などもありましたが13年間を振り返ってみていかがですか。
地域の文化や歴史が反映されたブランドを作りたいという思いが実際にIKIJIという形になり、海外でも認知されるようになってきたことはとても嬉しく思っています。と同時に、これからのことを考えると不安もあります。例えば、ファッション業界は環境汚染産業第二位と言われています。
今後さらに、環境への配慮が必要となり、環境に良い素材を使用するなどの対応が求められていくでしょう。IKIJIとしては環境に配慮をしながらも着心地がよくて上質かつ綺麗なものを作り続けていく必要があります。
また、労働力不足問題などとも向き合わなければいけません。日本の縫製工場では高齢化が進み、70代の方が縫製している工場もあります。これはファッション業界に限った話ではありませんが、一つの商品を作るのにたくさんの時間と技術、経験と知識が詰め込まれていること、ものの価値と、それを作っている職人の価値が、きちんと評価されるようになることを願っています。
ーIKIJIとして掲げられている今後の目標があれば教えてください。
海外で少しずつブランドが認知されてきているので、より広い市場に目を向けていきたいと考えています。海外市場に今まで以上に注力することが、IKIJIのこれからに大きく影響していくはずです。私たちがやるべきことは、今やっていることを着実に前に進めていくことだと思っているので、愚直に頑張ります。
文・構成/松本佳恋
ショッピングユニットでバイヤーをしています。
スタイルストアの商品によって、どこかで誰かがちょっとだけ幸せになればいいなと思ってバイイングをしています。それだけが私の大きなこだわりです。