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自社製品開発が人材確保にも寄与。町工場の新たな挑戦

2023年02月22日更新


金型製造を行う株式会社石井精工が新しく始めたブランドALMA(アルーマ)。自社製品開発という新たな挑戦に取り組んだ背景には様々な理由があったそうです。今回は3代目取締役である石井さんに、自社製品誕生の経緯と、開発においてこだわった点についてお伺いしました。

自社製品開発に挑戦したワケ

ーアロマピンズが誕生した経緯について教えてください。


私たちは60年以上、主に自動車関係のゴム製部品を量産するための道具である、金型の設計と製造を行ってきました。その金属を精密に加工する技術を活用して作ったのがアロマピンズになります。


金型を作る職人は、自分達が作った金型を使用して完成した製品を見ることは少なく、金型を作っている時点ではどんな商品を作るための型なのかが分からないことが多くあります。そのため、私が現場にいた頃、もっと石井精工がどんな技術を持った会社かが伝えられる機会があればと考えていました。入社して5年ほど過ぎた頃、自社製品の開発に取り組むことを決意したのです。

ー具体的にはどのように自社製品の開発を進められたのでしょうか。

私はインテリアコーディネーターの資格を持つくらい、インテリアが大好きだったので、売られている商品がどの会社によってデザインされたのかをよく見ていました。そこで、いいなと思った商品を作っている会社さんやデザイナーさんに直接電話をさせていただき、一緒に自社製品の開発ができないか相談。多くの会社には断られてしまったのですが、ありがたいことに話を聞いてくださった方が紹介してくださったのが墨田区の取り組み、ものづくりコラボレーション事業だったのです。

(*)ものづくりコラボレーション事業とは、高い技術力を持つ墨田区の事業者と世界で活躍するクリエイターとのコラボレーション事業のこと。

削り出しの技術を駆使したアロマピンズ


ー初めての自社ブランド立ち上げにあたり、苦労された点などがあれば教えてください。

一般消費者に届けたいという目標を基準に考えた際、自社製品は手頃な価格でたくさんの方に手に取っていただけるものである必要がありました。そのため加工などにかかるコストとデザイン性の両立には苦労しましたね。

実は初めからボタン型のアロマピンズで開発を進めていた訳ではなく、コストなどを考慮した現実的なアイディアを出し合う中でアロマピンズに決定したのです。

ーアロマピンズの設計においてこだわった点を教えてください。


通常ピンズはボタンと針を溶接や接着していますが、私たちのアロマピンズは、アルミの塊から針の先端まで一体で削り出しています。この金属の塊を削っていく作業を削り出しというのですが、これには高い技術力が求められます。針の細さは1mm程度ですので、加工途中で折れたりしないように繊細に削り出していく必要性があるのです。


また、細かい削り出しには細い刃物が必要となりますが、市販品では対応できないため、まずは刃物を削り、その削った刃物で金属を削るといった作業も行っています。手間はかかりますが、石井精工だからこそできる、細部にまでこだわったデザイン設計となっています。

ー確かに、ボタンと針の一体型というのは本当に珍しい気がします。


ボタンの色に関しても、アルマイト加工の会社さんとデザイナーさんと相談して決めました。通常のアルマイト処理よりも優しい色味となっているのはたくさんの方につけていただけるよう工夫したポイントになります。他の素材では味わえない金属加工ならではの光沢感をたくさんの人に楽しんでいただきたいです。

細く長くブランドを育てていく

ーアロマピンズを販売してみて反響などありましたか。


実は自社製品の開発の裏目標として若手の人材確保がありました。新しいことに取り組んでいる会社であること、そして技術を駆使した自社製品を販売していることをアピールできれば、若い人たちにも町工場で働くことに興味を持ってもらえるのではないかと思っていたのです。そして実際にアロマピンズをきっかけに石井精工を知ってくれ、面接に来てくださる方々がいらっしゃったのはとても嬉しかったです。

また、これまでメインに行ってきた金型の製造は注文を受けてから対応していました。それに対して、自社製品の開発は売れると信じて開発するという点においてリスクが大きく、社内の理解を得るのが初めは難しかったのです。しかし百貨店で販売が実現するなど成果が出たことで新商品の開発への取り組みに協力的な体制が整ったと思います。

2016年には墨田区の優れた商品の証でもある「すみだモダン」にも認証され、今でも催事や展示会にも参加しているので、より多くの方の目に触れる機会を増やしていきたいです。

ー最後に、今後の展望や目標があれば教えてください。

せっかくスタートした自社ブランドなので、細くてもいいので長く続けていきたいと思っています。商品を通してものづくりの凄さや面白みに触れてもらえるよう様な商品作りを心掛けていきたいと思います。直近では新しいラインアップの販売に向けて動いているのでぜひ新商品を楽しみにしていてください!

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文・構成/松本佳恋

今回ご紹介した商品

このコラムを書いた人

楠 美冴登

スタイルストア バイヤー

楠 美冴登

ショッピングユニットでバイヤーをしています。 スタイルストアの商品によって、どこかで誰かがちょっとだけ幸せになればいいなと思ってバイイングをしています。それだけが私の大きなこだわりです。