すみだモダン×スタイルストア
職人技が生きるモノづくりへのこだわりと墨田への愛
サクラワクスは高い技術が求められるとされている高級革を扱う革小物ブランドとして、墨田の地でモノづくりをされています。地域との繋がりも大事にしながら活動を続ける2代目の和久代表に、革小物づくりのこだわりや、墨田への愛についてお話を伺いました。
高級革だからこそ必要とされる技術
ーまずは会社の歴史について教えてください。
和久さん:60年以上前から先代の父が墨田区で革職人としてクロコダイルなどの高級素材を中心にものづくりに携わってきました。熟練の職人だからこそできる技術もあり、今では数少ない工房の一つです。
ー高級素材を扱うにあたってはどのような技術が必要となるのでしょうか。
和久さん:例えばですが、革は部位によって厚みが異なります。できるだけ軽いカバンなどを作るためには革の厚みを統一するだけではなく薄く加工する必要がありますが、高い技術がなければ途中で穴が空いてしまうんです。穴が空くと高級革は無駄になってしまいます。
和久さん:その他にも、型を抜く場所をあらかじめ考えながら裁断する技術や、シワがよらないように伸ばしながら貼り合わせる技術、つなぎ目が分からないように作る技術など、革を熟知した職人だからこそできる仕上がりがあるのです。
そう言って見せてくださったのが、ショールームにさりげなく置いてある傘の柄の部分でした。手に取ってみると緩やかなカーブを描く傘の柄に、つなぎ目も皺も無い状態できれいに革が巻かれていているので驚きました。その美しさは、高い技術力がないと実現しないものというのが一目でわかる逸品です。サクラワクスの革小物を手掛けるのは、こういった高い技術力を持つ職人さんによるものなんです。
素材から手を抜かずに、とことん追求
ーモノづくりにおいて、大事にされていることは何かありますか。
和久さん:常に心に留めているのは先代から言われ続けていた「素材から怠るな」という言葉。素材やデザインなどに、とことんこだわるのがサクラワクスです。そして全ての商品にこだわりを持って作っているので、一つひとつに語る事ができるストーリーがあります。
理想を現実にするために、時には20~30の企業に電話して金型を作ってくれる会社を探すことも。素材も実際に触ってみないと分からないので、様々な素材を全て取り寄せ、何度も試作を行っています。
ーサクラワクスの商品はどれもシンプルではありますが、ユニークさや新しさも感じられます。
和久さん:長く使っていただきたいのでデザインはシンプルにしていますが、細部にこだわった設計をしています。また、革の軽さを活かした竹と革でできたうちわや、男性にも使っていただけるデザインのがまぐちなど、他社がやらないような商品開発にも取り組んでいるので、ぜひお気に入りを見つけていただきたいです。
ーそんなこだわりへのモチベーションはどこからやってくるのでしょうか。
和久さん:他社ができない事ほどやってみたいというチャレンジ精神から、ですかね。実際にできた商品は自分自身が半年ほど使ってみて、不具合がないかを確認した上で販売へと進めます。そのため構想から販売までに1~2年かかることも多いんです。それでも、もっと追求して良いモノを作りたいという気持ちは変わりません。
また、全身をサクラワクスの商品で揃えてくれるお客様や、リピートして購入してくださるお客様がたくさんいらっしゃることも嬉しく、大きな励みになっています。サクラワクスでは壊れた際の修理対応も行っているので、安心して長く使っていただければと思っています。
墨田区の横のつながりを大事に
ー地域に根付いたモノづくりも意識されているとお伺いしました。
私は墨田区でずっと育ってきましたが、墨田区はモノ作りを行っている家が多く、私だけではなく同級生の多くが家業を継いでいます。その横の繋がりをサクラワクスでは大事にしているのです。
例えばサクラワクスで使用している包装資材なども全て墨田区の企業のものを使用しています。その他にも墨田区の地場産業である豚革も積極的に使用しています。通常、豚革は使える部分が限られており、傷も多いことから豚皮を使わないメーカーも多いのですが、地域に根付いたモノづくりという観点を大事にしているからこそ使用しています。
ー横の繋がりがあるのは素敵ですね。
少しでも墨田区を盛り上げられたらという思いから「すみだ東京ものづくり計画(通称STMK)」の会長も務めています。STMKでは墨田区でモノづくりを行っている企業が連携して海外出展を行うなど新しい企画や新しいモノづくりに積極的に取り組んでいるんです。
コロナ禍で大変だった企業も多くありましたが、そんな時も販路を紹介するなど、助け合ってやってきました。これからもこの繋がりを大事にするとともに、何かあった時の相談窓口としてSTMKが機能すればいいなと思っています。
ー最後に、今後の展望について教えてください。
長く使えて、軽くて、丈夫なのが革の魅力です。革ならではの良さをいかした、新しいモノづくりに挑戦していきたいと思っています。
また、職人同士のコラボから新しい商品が生まれたら面白いのではないかとも思案中です。今後は業種が異なる職人さんの知見と技術、そしてサクラワクスが持つ知見と技術を組み合わせて、今までなかった新しい何かを世の中に出していきたいと思います。
考えれば考えるほどアイディアが湧いてきてワクワクする、と楽しそうに語る和久代表。自社と自社製品への愛はもちろん、墨田区と墨田区を拠点を持つ仲間への愛も深いことがよく分かったインタビューでした。そんな愛溢れる和久代表率いるサクラワクスのこだわりの革小物は、日本だけではなく世界中の方に手に取っていただきたい逸品です。
文・構成/松本佳恋
ショッピングユニットでバイヤーをしています。
スタイルストアの商品によって、どこかで誰かがちょっとだけ幸せになればいいなと思ってバイイングをしています。それだけが私の大きなこだわりです。