すみだモダン×スタイルストア

地域貢献や日本の伝統を見据え、職人の技術に裏付けされたものづくり[すみだモダン×スタイルストア]

2024年11月20日更新

1946年に創業し、墨田区・東向島の地で革と品質、使いやすさにこだわり、バッグや財布、ベルトなどを高い技術力を持つ職人による手作業で1点1点つくっている「二宮五郎商店」。

約3年ぶりのインタビューとなった今回、代表取締役である二宮眞一様に、すみだモダン2023に認証された活動・アイテムについてお伺いしました。

前回のインタビューはこちら

地域貢献につながる、エゾ鹿革を使った製品づくり

―すみだモダン2023には2つの活動が認証されましたが、まずは【自然環境保護と地域共生社会の実現を目指し、エゾ鹿革の製品を製造する活動】についてお話を伺いたいと思います。なぜその活動を行おうと思ったのでしょうか。

二宮さん:この活動は、元々墨田区と北海道十勝地域の地域連携プロジェクトからスタートしました。十勝地域ではエゾ鹿による農作物の被害額が大きく、その対策としてエゾ鹿を捕獲する個体数管理を行っていました。

捕獲したエゾ鹿の肉はジビエ料理として人気があるのですが、皮はほとんど利用されずに廃棄されてしまっており、なんとか利用できないかと考え、2023年1月に墨田区で革の鞣しを行っている山口産業さんと十勝に行くことに。山口産業さんには植物タンニンを使った独自の鞣し技術でエゾ鹿をなめしてもらっています。

現在、ハンターは減少傾向にあり、育成も追いついていません。そこで、もともと廃棄されてしまうエゾ鹿の皮を購入することで、地元ハンターの育成や獣害対策への貢献にもつなげています。

―エゾ鹿革の特徴を教えてください。

二宮さん:本州の鹿は約60kgですが、エゾ鹿は約150kgととても大きく革に厚みがあります。そして、牛革よりも丈夫で長持ちすると言われています。またモチっとした触感が牛革や豚革とは大きく異なるところです。ただ、革の繊維の結びつきが弱く、伸びてしまいやすいことと、自然に収縮してしまうので職人泣かせの革です。

―エゾ鹿の革を使って、どのようなアイテムを作っているのでしょうか。

二宮さん:財布やバッグなどのほか、地元のレストランで使われる、ソムリエのエプロン、ワインブック、ランチョンマットなども作っています。

―次はすみだモダン2023に認証されたもうひとつの活動【日本の伝統技法「網代編み」を革製品に表現し、古来の文化やデザインを現代に伝える活動】について伺いたいと思います。

なぜ「網代編み」をモチーフにした製品を作ったのでしょうか。

二宮さん:まず「網代編み」についてですが、古くは茶室の天井や魚を入れるときの竹のかごなどに見られた伝統的な日本古来の意匠です。その美しい伝統的な柄を国内だけでなく世界にも発信するために作り始めました。イタリアのフィレンツェで開催されている、世界最大規模のメンズファッションの見本市「ピッティ ウオモ」にも出品しました。

当初はイタリアの職人に実際に編んでもらっていたのですが、細かな編み込みに爪が引っかかってしまうことがあり、現在では日本国内で金型を作って型押しの革の生産を行っています。

―とても立体的なので型押しには見えず、本当に革を編んでいるように見えますね。

二宮さん:精密な模様を真鍮の金型に施すことと、熟練した職人が加工を行うことで、編んでいるかのような美しい「網代編み」の模様を再現しました。

―網代編みの型押し革をつくる上で難しかったことはありますか

二宮さん:最初にヤギの革で作ってみたところ成功しました。その後オイルを多く含む革で作ってみたのですが、最初はなかなかうまくいきませんでした。現在では豚革でも作ることができます。この型押しにはスキンと呼ばれる革が適していることが分かっています。

―網代編みをモチーフにした「アジログレインシリーズ」では、どのようなアイテムを作っているのでしょうか。

バッグや財布、名刺入れなどを作っています。

商品には弊社独自の色加工を施しており、使い込んでいくと、経年変化で型押しの凹凸部分に濃淡が生まれ、より立体的な印象になります。

―今後、注力していきたいことがあれば教えてください。

二宮さん:テーマを決めて製品づくりをしていきたいと思っています。例えば旅をテーマにしたり、日本の文化や、寺院、庭園などからテーマを見つけていこうと考えています。また、生活用品として利便性を犠牲にせず、時代に合ったものを作っていきます。

このコラムを書いた人

スタイルストア 編集室

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