バイヤーからのお便り
ジャムスプーンに池は必要なかった、という話。
ジャムスプーンの話を聞いていたとき
こんな言葉が飛び出しました。
あのくぼみを「池」と言うんですね。
で、ジャムスプーンに池は不要だと。
地道なものづくりの終着点は、
先端のカーブが美しいシンプルなへら。
これが思った以上に使い勝手のいい
ひとつの道具の完成形になりました。
願いはひとつ、ジャムを最後まで食べたい!
底や角のジャムをすくえるスプーンを
倉敷でみつけた絶品ジャム。
完食直前、意外と瓶に残ってしまう。
底や角に残ったものは、
スプーンでは全然取れなくて、
うー・・・もったいない。
人生で初めて
「ジャムスプーン」が必要だ、
ということになりました。
探したのは、とにもかくにも
瓶の「底」や「角」に残ったジャムを
きれいに回収できるもの。
大久保さんのジャムスプーンでした。
木工家が「刃物」で仕立てます
自作の道具で、昔ながらの製法で
大久保さんのつくるジャムスプーンは、
「南京がんな」という、もともとは
椅子などの洋式家具用の道具が
使われています。
それも、カトラリーを作るのに
最適化した自作の南京がんな。
刃物部分は新潟の鍛冶屋さんに
頼んで作ってもらい、自分で道具に
仕立てたのだそうです。
一般的な木のカトラリーは
やすりをかけてツルツルにしたり、
塗装をしたりするのに対して、
このジャムスプーンは、
木を刃物で切っただけ、という
シンプルで昔ながらのつくり方。
やすりをかけないことで、
木に細かいキズが入らない為、
水分が沁みこみにくくなり、
雑菌やカビなどの繁殖を
抑えてくれます。
ジャム以外にも、用途はいろいろ
餃子作りや、納豆を混ぜたり・・・
手の感覚で絶妙につけられたカーブ。
このヘラ、家で餃子を作るとき、
皮にタネをすくってのせるのに
とーっても便利に使えます。
他にもソースやドレッシングを混ぜたり、
納豆ヘラなんかにもいい。
「池」をなくしたことで、
ジャムスプーンの域を超えて、
使い勝手のいい調理道具にも
なった、というわけです。
木工家に家具をオーダーするのは
ちょっと敷居が高いかもしれない。
でも、こんな風に、身近な道具で
その仕事ぶりに触れられるのは
嬉しいですね。
■追伸
大久保さんから、とても美しい写真を頂きました。
皆さんにもお見せしたいと思います。
彼が工房を構える、長野県松本市の風景です。
大手小売業で服飾雑貨のバイイング、新規ブランド開発を行う。その後活動の場をインターネットに移し、2006年にスタイルストアへ参加。 得意ジャンルは服飾雑貨、最近は地方の名品発掘がおもしろくて仕方がない。モノの背景を知ってこそ見える、真のお買い得品をセレクトする、これが信念です。