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墨田の技術が集合したフック。ヨシズミプレスの新たな看板に
まだ自動プレス機械がなかった時代にプレス加工会社として始まったヨシズミプレスは、時代に合わせて業界を問わず様々な商品の部品を提供してきました。
そんな中、新たな挑戦として開発したのは蛍光色が特徴的なドットフックとラインフック。自社製品の開発を決めた経緯と、今後の展望について専務取締役の吉住研さんにお話しいただきました。
多種多様な製品の部品を作り続けてきたヨシズミプレス
ーまずは会社の歴史について教えてください。
1950年に本社工場のある墨田の町で始まりました。祖父がケトバシ(足踏みプレス機)で内職のような形で始めたのがスタートで、足で踏んで、てこの原理を活用してプレスをしていました。当時は缶切りの部品や鞄の金具など、雑貨の一部分を作っていたと聞いています。
その後、近代化に伴い分業制がなくなったため、金型も自社で作るように。一括で仕事を請け負えるようになったことや、自動プレス機械の導入、景気の拡大によって、会社が成長していきました。
ー扱う部品も時代と共に変わっていったのでしょうか。
現在は文具関係が6割を占めていますが、電池関係が主力製品となっていた時期もありました。まだリチウムイオン電池に必要なニッケル端子の安定製造が難しかった頃から、量産をしていたからです。
現在はボールペンに使われる金属クリップの部品が主力です。こちらは輸出がメインとなっており、ペンのクリップだけでも毎月300万本分の部品を作っています。日本の筆記用具は海外でも人気のようです。
自社製品の開発は会社の可能性を広げた
ー自社製品の開発を決めたのはどういった経緯があったのでしょうか。
製造している部品は自社製品ではあるものの、パーツにすぎず、最終製品となる完成品を作ってみたいとずっと思っていました。
そんな時に、同じ墨田区の笠原スプリング製作所さんが『ものづくりコラボレーション事業*』で開発していたてのひらトングの金型を作らせていただくことに。試行錯誤して一緒に開発をしたことで、自社製品を作るのって面白いなと思い、自社製品の開発を決めました。
*高い技術力を持つ墨田区の事業者と世界で活躍するクリエイターとのコラボレーション企画。
ー開発にあたって大変だったことや印象に残っていることはありますか。
ドットフック、ラインフックはデザイナーさんと一緒に開発を進めたのですが、デザイナーさんならではの提案には驚かされました。
金属にマグネットのような性能を持たせてくっつけられないかといった提案をもらった際は、検討した上で難しいことをお伝えしたのですが、こういった外部の方による面白い発想や提案が新しいものを生むのだと実感した出来事だったと思います。
ードットフック、ラインフックの開発でこだわった点があれば教えてください。
特徴的な蛍光色を出すのにもこだわりました。ハゲないようにしっかりと塗装してくださる技術を持った塗装屋さんに依頼しています。塗装もですが、研磨など、商品を作るのにはたくさんの墨田区の会社さんが関わってくださっています。まさにメイドイン墨田の商品になっています。
ー自社製品が発売されたことによる反響はいかがでしたか。
会社の新しい看板がまた一つ増え、会社の可能性が広がったと思います。
自社製品ができたことで、会社の知名度が広がり、新たなお仕事の話もいただくことが増えたので挑戦してよかったです。
強みを活かして、ウィンウィンな提案を
ー自社製品開発をきっかけに新たな仕事の話も増えたとのことですが、新型コロナによる落ち込みからも回復されたのでしょうか。
昨年は新型コロナ前にまで業績が回復しましたが、今年は円安の影響や物価高の影響を受けており、少しまた売上が落ちてきているような状況です。
プレス加工はコストが安いことが短所と言えますが、お客様の用途を考え、提案をすることで売上単価を上げる工夫をすることはできます。例えば、ペンのクリップでも、プレス後錆びないように研磨やメッキの工程がありますが、その際に不良品が出ないように突起をつけるなどの工夫をすることができます。この提案によって歩留まりが変わるため、単価に反映することができるのです。
このように私たちが作る部品の多くは、機能が担保できれば製造方法や見た目が問われないケースが多いので、お客様のコストを下げられる提案を積極的にしていくことで私たちの売上げも上げていければと思っています。
ーお客様にとってもありがたい提案ですね。最後に今後の展望についても教えてください。
文具だけに止まらず、車載関係や医療部品など、その時代に必要な部品を、分野問わず取り組んでいきたいです。私たちの強みはプレスができて、金型まで作れること。そして試作から量産まで一貫して受けられるので、スピーディーに対応ができることです。その強みを活かしていけたらと思っています。
直近では、本社工場が手狭になってきたので、新しい工場の建設を予定しています。将来的には研究開発ができる金型研究所も自社で持つことが目標です!
文・構成/松本佳恋
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