すみだモダン×スタイルストア
適量生産の時代へ。アパレル業界にとって意味のあるブランドを目指すWASHI-TECH
墨田区でメリヤス業を1929年から営み続ける株式会社和興。アパレル業界が持つ課題に対するアクションとしても重要な意味を持つという自社ブランド、WASHI-TECH(ワシテック)。その立ち上げについて、代表取締役社長・國分さんにお話をお伺いしました。
下請け型から提案型ビジネスへの移行
ーまずは会社の歴史について教えてください。
株式会社和興は1929年に墨田で創業した会社です。創業当時はまだカットソーといった言葉もない時代で、女性の肌着をメインに縫製を行っている会社でした。現在はOEMメーカーとして縫製業を行いながら、自社製品WASHI-TECHの開発と販売を行っています。
ー國分さんはいつから会社にジョインされたのでしょうか。
2015年に入社しました。それまではインテリアデザインの仕事をしており、株式会社和興は妻の実家の家業でした。元々は継ぐ予定はありませんでしたが、歴史ある会社を廃業させるのはもったいないと思い、継ぐことを決意。1年間岩手県にある自社工場で働き、その後、東京で営業職を中心として行った後、2021年に4代目代表に就任しました。
ー長らくOEMメーカーとしてされてきた中で自社ブランドを立ち上げられたきっかけは何だったのですか。
アパレルからの発注ありきの、下請け型ビジネスであることに課題を感じていたことがきっかけです。企画・設計・生地の手配など全てクライアントとなるアパレルメーカーが行ってくれるため、OEMメーカーは能動的に提案することがなく、基本的に受け身のビジネスを行っています。
そこからの脱却案として、自社ブランドの立ち上げを検討しはじめました。ECサイトやSNSが発展したことで自社製品を売りやすい環境になっていたこともあり、2020年から始動してできたのがWASHI-TECHになります。
上質なライフスタイルを目指したWASHI-TECH
ーそれまで受け身だったところから、自社で動くというのは大きな変化だったと思います。不安や抵抗はありませんでしたか。
会社を継いだ際に、今後会社として生き残っていくには何か新しいことに挑戦する必要があるということは感じていました。そのため下請け型から提案型のビジネスに切り替えることを決めていたのでストレスなく動くことはできたと思います。
また、業界は違いましたが、インテリアデザインの仕事をしていた際は提案型が中心だったこと、前職でも上質なライフスタイルを目指して動いていたのでそこは洋服作りにおいても活かすことができると思っていたことから、抵抗は少なかったですね。
ーWAHI-TECHの特徴について教えてください。どのような点にこだわって開発を行われたのでしょうか。
大手企業にはできないもの、他社にはないものを作ることと、自社の強みを最大化したものを作ることを大事に、開発を行ってきました。
まず、縫製技術では中国製の大量生産品と戦うのには限界があると感じていたため、素材開発に目を向けました。その中で見つけたのが福井県の越前和紙です。日本の和紙の中でもクオリティが高いことが有名で、手間はかかりますが、伸縮性や抗菌作用を持っています。
通常、抗菌機能のあるアパレル製品はあとから薬品で加工して機能付与することが多いですが、植物由来の機能となっているため、アトピー持ちの方や赤ちゃんにも安心して着用いただけます。
また、和紙の原料のマニラ麻はフィリピンで自生している循環型植物のため、環境にもやさしい素材となっています。素材にファンがつく服を目指して和紙100%の糸を使ってできたのがWASHI-TECHなのです。
アパレル業界が持つ課題に対してアクションを取り続ける
ー開発から行ってきたWASHI-TECHの販売後の反響はいかがですか。
WASHI-TECHを好きになってくださる方は少しずつですが、着実に増えていると思います。昨年は「すみだモダン2022」のブランド認証もいただき、いろんな方に知っていただく機会も多くなりました。
一方で販売することの難しさは日々感じています。良いものを作れば売れると思っていましたが、現実はそんなに甘くない。より多くの人に届けるのには、まだまだ力が足りていません。今後は、店舗をはじめ、WASHI-TECHの魅力を理解してくれる方と一緒に、世の中に届ける方法を模索していく必要があると思っています。
ー最後に今後の展望について教えてください。これから取り組みたいことや目標などはありますか。
アパレル業界は大量生産による廃棄問題などの課題を多く抱えており、石油産業の次に地球破壊産業だと言われています。この現状に対して株式会社和興として何ができるかを考え、行動に移すことに引き続き注力していきたいです。
社会に与えられる影響は決して大きくはないですが、小さなアクションでも業界にとって意味があると信じています。適量生産の提案や利益を優先するのではなく環境を考慮した提案などを積極的に行い、アパレル業界のあり方を変える必要性を伝えていきたいです。
文・構成/松本佳恋
ショッピングユニットでバイヤーをしています。
スタイルストアの商品によって、どこかで誰かがちょっとだけ幸せになればいいなと思ってバイイングをしています。それだけが私の大きなこだわりです。