バイヤーからのお便り
どう違う?どう選ぶ?鉄フライパンのQ&A
こんにちは、バイヤーの畠田です。
つかい手の方から、購入前・購入後のお問い合わせで多くいただくのが「鉄のフライパン」についてのご質問。使う前に油慣らしが必要、使い終わったら手入れが必要……など、留意点が多いように思えるし、文字にするとなんだか難くて大変そうに見えますよね。でも、実際にやってみたら意外と簡単で、手間もかからなかったりします。
「鉄のフライパンや鍋って憧れるけど、使いこなせるか不安」という声がある一方で、「こんなにおいしく仕上がるならもっと早く変えたらよかった!」という声もとても多いのです。
今回は、過去にいただいたご質問などを元に、Q&A方式にまとめてみました。一言で鉄フライパンはこうですよ!と言うことは難しいのですが、少しでも鉄フライパン選びの参考になれば幸いです。
―――目次―――
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Q. 鉄フライパンにもいろいろあるけど、何が違うの?
A. 作り方によって3種類に分けられて、それぞれ得意な料理も少し異なります。
鉄のフライパンのつくり方は大きく分けて3通りあります。
ひとつ目は、鉄板を型抜きして成形する「プレス加工」。数を作ることができるので、比較的安価で、鉄フライパンはこの作り方のものが多いです。当店取り扱いのものだと、「松田美智子の自在道具/自在鍋」「Tetsu Nabe」「JIU/FRYING PAN JIU」などがこの作り方にあたります。比較的薄手で軽いものが多く、野菜炒めやチャーハンなどの、手早く火を通すような炒める料理が得意です。
ふたつ目は、鉄を叩いて成型する「打ち出し」。当店取り扱いのものだと、「Metal NEKO/鍛冶屋のフライパン」などがこの作り方にあたります。物にもよりますが、打ち出しもプレス同様に軽く、何度も鉄を叩くからこそ生まれる表面の凹凸が油馴染みをよくしてくれます。ただ、打ち出しで作られているものは多くなく、手仕事で作られているものは値段も張るものも少なくありません。
みっつ目は、型に鉄を流し込む「鋳物」。当店取り扱いのものだと、「UNILLOY/フライパン」や「toki no niwa/鉄鋳物フライパン」などがこの作り方にあたります。鋳物は、他の2つと比べて厚みがあるため重さがあり、敬遠される方もいらっしゃると思います。でも、板厚がある分、蓄熱性が高く、一度温まったら食材を入れても温度が下がりにくく、食材の中まで火が通りやすいという特徴があり、鉄フライパンの良さを最大限に感じていただける仕様でもあると思います。ハンバーグやステーキなど厚みのあるお肉、ホットケーキやお好み焼きなどムラなく何枚も焼きたいもの、餃子などパリッと仕上げたいものなど、短時間で調理する料理よりも、「じっくりと焼く」料理で本領を発揮します。
Q.どうやって選べばいい?はじめにおすすめの一本は?
A. まずは片手で無理なく持てる重さのものを
大きさや深さなどの形状、デザインのお好み、価格など、普通のフライパンと同じポイントに加え、「どんな料理をよく作るか、おいしく作りたいか」を基準に選んでいただくのがおすすめです。 先述の通り、製法や板厚によって少し得意な料理が異なるので、炒め物を美味しく作りたいなら、「プレス」か「打ち出し」の板厚薄めのもの、焼き物を美味しく作りたいなら「鋳物」の板厚があるものをぜひ候補に考えてみてください。
はじめて鉄フライパンをお使いになる場合は、「片手で10秒傾けて持てるくらいの重さのもの」の中から選ぶことをおすすめします。いくらおいしく仕上がるフライパンでも、重くて扱いにくく使わなくなってしまうと本末転倒。製法や板厚によって多少の仕上がりの差はありますが、どんなものでも鉄フライパンならではのおいしさは享受できます。
お手入れ方法の違いも少しづつ差がありますが、基本は同じですし、お手入れは慣れの問題かなと感じています。まずは「重さや大きさの面で使いやすいかどうか」を最優先で考えていただくのが、個人的にはおすすめです。
Q.くっつかない、焦げつかせないために気をつけることは?
A.しっかり熱してから食材を入れれば大丈夫
鉄フライパン=くっつきやすい のイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。実はしっかり熱してから食材を入れれば、全くくっつかずに焼くことができます(油が馴染んでいない状態の時は、油を少し引いてあげてくださいね)。
余熱をしっかり行えば、調理をするときは、中火から弱火でOKです。ここで強火にしすぎると焦げつきの原因に。火加減さえ間違えなければ、ちょうどよい食感、ちょうどよい焦げ目がついた料理が仕上がりますよ。目玉焼きも、黄身は半熟で、裏面はパリッといい具合、でもくっつかずにスルン。鉄フライパンは保温力が高い分、フッ素樹脂加工のフライパンよりも裏面をカリっと仕上げやすいなと思います。
Q.使いはじめの方法や、お手入れ方法が違うのはなぜ?
A.取説要確認ですが、お手入れの基本はどれも一緒です
鉄はそのままの状態だと錆びてしまいます。そのため、お手元に届くまで何らかの方法で錆び止めがされていますが、その錆び止めを焼き切るための「空焼き」が必要だったり、油とくず野菜を炒める「油ならし」が必要だったりします。この使いはじめの処理は、フライパンによって違っているため、必ず取り扱い説明書をご覧くださいね。
日常のお手入れ方法も、少しづつご案内が違ったりしますが、
・洗剤をつかわず、お湯とたわしで洗う(お水を入れて沸騰させるでもOK)
・水を残さないよう、加熱して水気を飛ばす
・油が馴染んでいない使いはじめのうちは、油を塗ってあげる
・湿気の少ないところで保管する
が基本。文字に書き起こすと、ちょっと工程があるように見えるかもしれませんが、時間にしたらあっという間です。
「錆びに強い加工(窒化加工・オキシナイト加工など)」をしているものは一部、洗剤を使ってもOK、火にかけずそのまま乾燥してもOK、としているものもあります。ただ、洗剤を使うと、せっかくできた皮膜がとれてしまうので、なるべく使わずにお手入れいただくことをおすすめします。
Q. 黒い塗装が剥げてしまいました…
A.酸性の食品の調理はなるべく避けてください
表面の黒い塗装が剥げて、中の銀色が見えてしまった!というお問い合わせをいただいたことがあります。黒い表面が剥がれてしまった場合、食材に含まれる「酸」が原因であることが多いです。
鉄フライパンを使い続けると、酸化した油分が層になっていきます。この層のことを「樹脂層」と呼びますが、鉄フライパンを育てるというのは、この樹脂層を作っていくということ。樹脂層ができることでどんどん食材がくっつきにくく、使いやすくなっていきます。
鉄製品はトマトやレモンなどの酸を多く含む食材を調理すると、酸が反応してこの樹脂層を剥がし落としてしまうことがあります。人工的な塗装ではないので口にしてしまっても問題ありませんが、剥がれてしまうとその部分がリセットされてしまうので錆びやすくなったりしてしまいます。そのため、酸を含む食品はなるべく鉄フライパン以外のもので調理することをおすすめします。
ちなみに、昨年鉄フライパンをはじめて購入した当店のスタッフは、「鉄フライパンの特性上、使ったらすぐ洗ってすぐ拭かなきゃいけないという点がズボラな自分にはどうだろう…と思ってたけど、逆に制約があることで、フライパンを使いっぱなしでシンクに放置することがなくなり、キッチンも綺麗に保てるようになった」とのこと。気負わず、まずは使ってみていただければと思います。
最後に、おすすめの当店お取り扱い鉄フライパンを3つご紹介します。
まずは「鋳物なのに軽い」が特徴のUNILLOYのフライパン。鋳物の蓄熱性を備えながらも、扱いやすいよう軽量に作られています。つかい手の声でも「他のどのフライパンよりも肉を焼くと美味しく焼きあがります」といただいている通り、焼き物を特に得意としています。本格派の鉄フライパンが欲しい、でも重すぎるのは……という方におすすめです。
こちらは料理研究家・松田美智子先生が手掛けた「自在鍋」。深さがあるので、炒め物、焼き物だけなく、煮たりすることも可能。幅広い調理方法に対応してくれるので手にとる機会が多く、重さを感じにくい柄の工夫もあります。日常使いの一本としておすすめです。
最後に、「Tetsu」シリーズ。テーブルの上にそのまま出しても絵になるビジュアルであるだけでなく、窒化加工という錆びにくい加工がされていて、通常鉄フライパンではご法度な食洗機も使用可能。お手入れがどうしても不安!方には心強い一本です。
ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。