18世紀後半にアメリカで活動していた団体であるシェイカー教徒が、暮らしの道具として作っていた「シェーカーボックス」。
装飾を削ぎ落とし、実用性を追及して作られたその形は現代の生活にも馴染み、時代を超えて愛されています。

「まる工芸」の大澤昌史さんが作るティッシュケースは、そんなシェーカーボックスのつくり方を基本形として作られた、美しい一品です。
自然豊かな岐阜・飛騨高山で木工を生業にされている大澤さん。92度の蒸気で蒸して木を曲げ、真鍮の釘で丁寧に留める、という全行程を手作業で仕上げています。

木のティッシュケースというとどこかほっこりした雰囲気ものが多い印象ですが、こちらは部屋の印象を選ばない、軽やかで品のある佇まい。
曲げ木ならではの薄さやサクラの木目、カーブの絶妙な具合などがそう感じさせるのだと思いますが、ここで裏側にも注目していただきたい。

ベルトには、まる工芸「MARU」のネームが入っています
ティッシュボックスを固定するためのレザーベルトと真鍮金具が曲げ木の繊細な雰囲気を壊さずに全体の印象を引き締めてくれていて、かっこいいんですよね。
裏側なので普段は見えない場所ですが、こういったところまで細やかに気を配って作っていらっしゃることが伝わってきます。

このベルト一本でティッシュボックスがきちんと留まるので、ケースを移動させても抜け落ちることはありません。

「スワローテイル」と呼ばれるつばめの尾に似た、留め金の部分はつくり手の個性が感じられる箇所です。
こちらのスワローテイルはふっくらとゆるやかに尖った剣のような絶妙な形をしているため、sword(ソード)と名付けられています。

「収納道具であるシェーカーボックスは特に決められた用途のないもの。それはそれで面白いけれど、暮らしの中で明確に用途を持った道具を作ってみたくてティッシュケースを作った」そんな風に大澤さんは仰っていました。
シェーカー教徒が大切にしていた「美は有用性に宿る」という考え方。その言葉がぴったりな、思わず眺めていたくなるティッシュケースです。