バイヤーからのお便り
新年のご挨拶と桜の木のへら、そして職人の話
新年あけましておめでとうございます。
皆さま、健やかに新しい年をお迎え
でしょうか?
東京は、晴れ渡った青空がまぶしい、
気持ちの良い元日となりました。
今年もよろしくお願い致します。
2016年も新年のコラムは、年末に発表
する「年間ランキング」に並ぶ商品を
見ながら書いたことを思い出します。
今年、ご紹介したいなと思ったのは、
4位にランクインした「桜の木のへら」を
作る、大久保ハウス木工舎の大久保さん。
スタイルストアをよく見てくださっている
お客さまには、もうお馴染みの商品
かもしれませんが、このへらと大久保さん
との話を、新年のコラムとして書いて
みたいと思います。
桜の木のへらが数百本単位で売れるということ
大久保さんと最初に出会ったのは、
2015年の長野県松本出張でのこと。
市内のイベント会場で、削りの実演をして
いた大久保さんから、ジャムスプーンを
購入したのがきっかけでした。
大久保さんとの付き合いがなければ、
「木を削る」という製法を意識することは
なかったかもしれません。
鉋(かんな)を使い、ひたすら削り、
木が道具に生まれ変わる。
大久保さんのへらは、正真正銘
彼自身がひとつひとつ手で削り、
作られたものです。
そんな「手から生まれるへら」が、
当店の年間ランキングの4位に入ると
いうことは、やはり量産品がランクイン
するのとは違った重みがあると思います。
もちろん、それは優劣ではありません。
ただ、私がぜひお客さまにご紹介したい
と思ったのは、大久保さんが自分の
へらを愛用する人、欲しいと求めて
くれる人への敬意をもって、ひたすら
木を削った時間のこと。
なるべく多くの人が買えるように、
全国の人に届けられるように、手仕事
であれど、いかに質・量ともに安定して
商品を作ることができるか、に挑戦し、
やりきった一年だったろうと思います。
ランキングの数字を見て、率直に
そう思いました。
「桜の木のへら」は、つかい手の声と共に進化する
もう一つ、印象的だったエピソードが
あります。商品ページの写真を見て、
大久保さんが「今見ると、去年(2015)
作ったへらだなーって顔してる」と
言いました。
大久保さん以外の人は気付かない
レベルですが、大久保さんは、
お客さまの声を受けて、桜の木のへら
を少しずつ改良しています。
「女性のお客さまで数名、『自分の手に
合わない気がする』『ちょっとゴツイかも』
というお声を頂きました。すべての人に
納得してもらう使い心地は難しいかも
しれませんが、手の華奢な女性の方でも
持ちやすいラインにするべく、小さな
試行錯誤は今も続いています」
(大久保さん)
つかい手の声を励みに、時に制作の
ヒントにし、「数をこなすことで見えて
くるものがある」と、丁寧に削り仕事に
向き合った2016年の大久保さん。
スタイルストアからつかい手の元へ、
多くのへらが旅立ったことで、道具が
愛され、つくり手へ感想が届き、それを
受けて作品がつかい手に寄り添った
進化を遂げる。こんな「ものづくりの輪」
のような循環が生まれたとき、私は
もっとも店の意義を嬉しく実感できる
のです。
つくり手とつかい手をつなぐことで、
2017年もこんな「輪」を一つでも多く
作っていけたら、と気持ちを新たにして
おります。
本年もどうぞよろしくお願いします。
大手小売業で服飾雑貨のバイイング、新規ブランド開発を行う。その後活動の場をインターネットに移し、2006年にスタイルストアへ参加。 得意ジャンルは服飾雑貨、最近は地方の名品発掘がおもしろくて仕方がない。モノの背景を知ってこそ見える、真のお買い得品をセレクトする、これが信念です。