インタビュー&ゲストコラム
【第二回】「アーム馬鹿」のつくるデスクライトとは― スワン電器インタビュー
「モノは手先の延長であるべき」
という理念のもと、創業以来一貫してデスクライトの開発・生産を行ってきた「スワン電器」。当店ではMiraやLED SWAN BULBが人気アイテムですが、スワン電器は、もともと手作りのデスクライトに特化したユニークな照明メーカーです。
その最新作のデスクライト「EXARM」は、驚くほどなめらかなアームの動きが最大の魅力。スーッと動き、ぴたっと止まる。つかい手のベストポジションを快適に照らす、理想の照明「EXARM」には、自称「アーム馬鹿」というスワン電器代表取締役の黒澤さん、常務の西山さんの並々ならぬこだわりが詰まっていました。
「手作り」で作られる大量生産品とは
(第一回から続く)
―――「かっこいいデスクライトを作りたい」という強い思いを、まずは黒澤さんが形にしていったんですね。西山さんは製品開発にはどのように携わられたんでしょう?
黒澤さん:わたしがDIVAの「産みの親」であるならば、西山が「育ての親」ですね。
西山さん:わたしも元々ものづくりが好きだったので、模型用の木材を加工して原型を作ったり、プラスチックの樹脂版を曲げたり、という作業が楽しくて、入社してからいろんな加工技術をすぐに覚えました。
入社当時は営業だったので、お客様のところに伺う度に、いろんな意見を頂くんです。「ここがもっとこうだったらいいのに」と言われたら、会社に帰ってネクタイ姿のままですぐに試作を作って見せにいく、みたいなことをしてましたね。そうやって、どんどんデスクライトを改良していったという背景もあります。
―――営業自らが試作を作る・・・すごいスピード感ですね。
西山さん:一般的に製品を作るときって、デザイナーが商品のデザインを考えて、技術者がそれを形にしていく、という流れが基本だと思います。でもわたしたちの場合は、商品のイメージが頭の中に明確にあるから、あとはそこにいかに近づけるかを追求するだけなんですよね。
―――なるほど。HP上に、「手作りで制作しています」という記載がありましたが、「ライト」を「手作り」ってどういうことなんでしょう?
西山さん:金属やプラスチックって、「ライン作業で同じものを大量つくる」というイメージがあると思います。でも、たとえ機械であっても完全に同じものを作ることはできなくて、行程の中でひとつひとつの部品に小さな差や、ズレが出てしまうんです。
そのパーツのズレは1/1000mmほどなんですが、それを組み上げていくと完成度にばらつきがでてしまうんですね。だから組み上げた後には必ず、ひとつひとつ人の目で見て、手で触って、調節をしています。
―――そんな手間がかかっていたとは。
西山さん:製品を完成させる時は、子供を送り出すように、「規定ではこう調整すべきだけど、この子はこういう性格だからちょっと違う風に調整しよう」とか、ひとつひとつ面倒を見なければいけないんです。大量生産品とは言え、親心がないと良いものは出来上がりませんね。
―――「最後まで人の目で面倒を見る」という前提だからこそ、この繊細な動きが実現できているんですね。
西山さん:こだわっている部分はたくさんあります。
たとえば、このスムーズな動きは既製品の金具では実現できなかった。
だから小さな部品ひとつをとっても、自分たちでオリジナルのものを作っていたりします。
いつも、「また金型から作る?お金かかるよ?」「いや、でもそこだけは譲れないですね…」みたいな会話が繰り広げられていますよ(笑)
既製品の部品を使う場合も、その場所に一番適した部品を徹底的に調べて探し出します。例を挙げると、アームをつなぐワイヤーは、自転車のブレーキに使われているワイヤーなんです。
自転車に使われている部品は、世界中で長い間使われてきた部品だから、何より実績があって信頼できるんですよ。小さな部品だとしても、妥協をしない。製品はその積み重ねで出来上がるものだと思っています。
―――このデスクライトに触れると、それだけの愛情をもってつくられたことが細部から伝わってきます。
本日は改めて、スワン電器の照明のすごさを知れたように思います、ありがとうございました。
第1回 デスクライトを、「家電」から「インテリア」に。
第2回 「手作り」で作られる量産品とは
スワン電器
1968年創業のライティングメーカー。創業者である黒澤正之がアームスタンドの製造を開始、アメリカイリノイ州シカゴのマークス社に、ノックダウン方式で「スワンライト」の輸出をした事からはじまる。その機能美を追求したフォルムは、建築などインダストリアル・デザイナーから多くの支持を頂いている。その後もコンスタントに製品を発表し続けると同時に「Artemide」の輸入を開始。アルテミデはイタリア・ミラノで1959年からファンクショナルなデザインで知られる照明ブランドで、その製品の国内販売提案を手掛けることで、幅広い「光の提案」を行うライティングメーカーです。
ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。