インタビュー&ゲストコラム
【第一回】「アーム馬鹿」のつくるデスクライトとは― スワン電器インタビュー
「モノは手先の延長であるべき」
という理念のもと、創業以来一貫してデスクライトの開発・生産を行ってきた「スワン電器」。当店ではMiraやLED SWAN BULBが人気アイテムですが、スワン電器は、もともと手作りのデスクライトに特化したユニークな照明メーカーです。
その最新作のデスクライト「DIVA」は、驚くほどなめらかなアームの動きが最大の魅力。スーッと動き、ぴたっと止まる。つかい手のベストポジションを快適に照らす、理想の照明「DIVA」には、自称「アーム馬鹿」というスワン電器代表取締役の黒澤さん、常務の西山さんの並々ならぬこだわりが詰まっていました。
デスクライトを、「家電」から「インテリア」に。
―――スワン電器さんのホームページには、「アーム馬鹿であれ」という、だいぶインパクトのある理念がありますね(笑)。黒澤さんは、なぜそこまでデスクライトの「アーム」にこだわるようになったんですか?
黒澤さん:まず簡単に自己紹介をしておくと、スワン電器は私の父が創業者です。元々家業を継ごうという気はなく、若い頃は音楽をやったり、ふらふらとしてました。ただ、「作ること」は昔から好きだったんですね。手を動かして作ることと、その仕組みを考えたりすること、両方好きで、学校の授業は工作と物理が楽しみという感じでした。
―――「工作」と「物理」が好き、というのは、アームマニアである「今」に通ずるものを感じますね。
黒澤さん:はい、今でも自ら手を動かして作ることは変わらずで好きで。自分で勝手に照明を作って、会社のエントランスに吊るしてみたりしてますね。
西山さん:いつも社員みんなで「また始まったよ」なんて言ってます。
―――実際に触れてみて「DIVA」のなめらかな動きには驚きました。
黒澤さん:ありがとうございます。照明を作っているなかで、なにより「アーム」にこだわっているのは、日本製のデスクライトならではの「動きの繊細さ」を追求したい、という想いがあります。江戸時代のからくり人形などを見ても分かるように、「動き」に関して、日本の技術力というのは昔から本当にすごいんですよね。「すーっと動いて、ぴたっと止まる」、という、簡単そうで実はなかなか実現できない、スムーズさと絶妙なバランス。弊社のラインナップの中でも、DIVAは特にアームの動きのなめらかさは最上位機種です。海外のお客さまでも、「Small miracle!」と絶賛してくれた方がいました。
―――奇跡のなめらかさですね(笑)!
黒澤さん:ええ、それは本当に嬉しいコメントだったのですが、一方でデスクライトは、机の上ではあくまで「脇役」ですからね。主張しすぎることなく、操作性や明るさを含め、つかい手に快適な環境をもたらすのが仕事。もちろん、アームの動きに限らず、灯りの質の良さというのも大切にしています。
―――幼い頃から照明器具もお好きだったんですか?
黒澤さん:好きでしたねえ・・・。先代である父親が、海外の輸入品のハロゲンランプを持っていました。すっきりとしているのに、白熱灯のような安らぎのある光が本当に好きで。思わず「これちょうだい!」とねだって、デスクで使っていました。当時の日本は、まだハロゲンランプのない時代でしたが、ハロゲンガスの光っていいんだなあと、幼心に思ったことをよく覚えています。
―――お父さまの影響も大きいんですね。
黒澤さん:ええ。父がスワン電器の社長を勤めていた時は、弊社は大手照明メーカーの協力工場でした。自社製品はほとんど作っていなくて、95%はそのメーカーの製品を担当していて、その中でも特に、「学習机についている照明」をメインで制作していました。
―――その流れで、スワン電器は「デスクライト」に特化しよう、ということになったのですか?
黒澤さん:それもありますが、一番のモチベーションは、「かっこいいデスクライトが作りたかった」というのがありました。「DIVA」の開発当初、デスクライトというと「電気屋さんで扱っている、安くてダサい照明」というイメージがありました。かっこいいデスクライトは全部海外からのインポート。日本製のデスクライトは、「学習机についている家電」という立ち位置で、インテリアの邪魔をしない、シンプルで美しいデザインのものはほぼ皆無でした。
―――メイドインジャパンのデスクライトが、かっこよくなったのは意外と最近のことなんですね。
黒澤さん:そう言えると思います。海外の照明がかっこよかったという話ですが、そもそも日本と海外では、照明に対する人々の考え方が大きく違いますね。今でこそ灯りが見直されるようになりましたが、昔の日本で照明にこだわりのある人はほとんどいなかった。家の照明は、とりあえずシーリングの「一番安くて明るいものをくれ」という感じでした。
そんな中で、私が北欧に行った時に印象的なことがありましてね。現地で会った方が、おじいちゃんから譲り受けたペンダントランプのシェードを、宝物として大切に使っていたんです。3世代に渡って、照明器具を受け継いで使うなんて、当時の日本ではまず見られない価値観でした。
―――素敵なエピソードですね。
黒澤さん:そうでしょう?そういう経験をしながら、日本でも「インテリア」として認められるデスクライトを作りたい。シンプルに「かっこいいデスクライトを作りたい」という思いが強くなっていきましたね。
つづく
第1回 デスクライトを、「家電」から「インテリア」に。
第2回 「手作り」で作られる量産品とは(近日公開予定)
スワン電器
1968年創業のライティングメーカー。創業者である黒澤正之がアームスタンドの製造を開始、アメリカイリノイ州シカゴのマークス社に、ノックダウン方式で「スワンライト」の輸出をした事からはじまる。その機能美を追求したフォルムは、建築などインダストリアル・デザイナーから多くの支持を頂いている。その後もコンスタントに製品を発表し続けると同時に「Artemide」の輸入を開始。アルテミデはイタリア・ミラノで1959年からファンクショナルなデザインで知られる照明ブランドで、その製品の国内販売提案を手掛けることで、幅広い「光の提案」を行うライティングメーカーです。
ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。