つくり手自身のための特注品
素材、形、使い方を既成概念から外す。牛革と磁石の「レザータッセル」[連載:つくり手の愛用品 vol.002]
スタイルストアのつくり手が自分や家族のために作った、未販売のプライベートな愛用品。つくり手にとって最大のお客さまとも言える、自分のためのフルオーダー品だからこそ、ものづくりのこだわりがぎゅっと詰まっています。今回ご紹介するのは、KAKURAのディレクター&デザイナーを務める石原ゆかりさんの「レザータッセル」。作ったきっかけやこだわりも含めて、詳しくお話を伺いました。
石原ゆかりさんのプロフィール
約12年間に及ぶグラフィックデザイナー生活の後、1998年にオリジナルプロダクトブランド「KAKURA」を設立。革・紙・陶器・竹など、異素材をデザインでつなぐプロダクト開発を得意とする。
スタイルストアでは、すべて手縫いで作られるバッグinバッグ「5レザーポケット」や、ノート、手帳カバーなどが特に人気。KAKURAの企画、デザイン、制作、地元大阪の高槻市でのファクトリーショップの運営を幅広く担う。プライベートでは大学生の息子さんのお母様。
今回の紹介してもらう「愛用品」について教えてください
今回石原さんにご紹介いただくのは、牛革を使用したカーテン用のレザータッセルです。まずはどのようなアイテムなのかを伺いました。
「牛革と強力な磁石を使ったタッセルで、磁石は両端の革で包み込んでいます。磁石同士がくっつき合ってカーテンを束ねるので、タッセルフックはありません。」
どういうきっかけでこの愛用品を作ったのですか?
フックがなく、磁石の力でカーテンを束ねるタッセル。なかなか見ないユニークなアイテムですが、それを作るきっかけとなったのは、一般的なタッセルへの不満と、知り合いの方の言葉だったそうです。
「カーテンに付属している一般的なタッセルは、共布のものが多く、味気ないなぁと思ったのがきっかけです。市販のタッセルフックも同様ですね。ずいぶん前にインテリアコーディネーターの知人からもそんな話を聞いたことがあって、ずっと心に引っかかっていたんです。素材、形、使い方を既成概念から外してみたい。そんな思いで作りました。」
どこにこだわったか、苦労したことなどのエピソードを教えてください
一般的なタッセルは味気ない、という思いから生み出されたレザータッセルですが、完成までにはさまざまな苦労がありました。
「はじめはカットした、裏表のある革で作ってみました。ですが革の裏が布に擦れると、革の粉がついてしまうことがあったんです。」
「そこでシステム手帳の革紐の、Bランクのものを使ってできないか試してみました。それで細くて長めの紐をくるくる二重で巻き留めたり、カーテンを途中まで開けてマグネットでカーテンを挟み込んだりできるようになったんです。」
「こだわっている部分としては、磁石部分の円形の革の縫いです。少し手間が掛かりますが、磁石ぎりぎりの革のサイズになっていて、さりげない雰囲気になっています。この点がタッセルのデザインのポイントになっていると思います。」
最後に、石原さんがものづくりで大事にしていることを教えてください
最後に、石原さんがものづくりにおいて、特に大切にしていることを伺いました。
「シンプルな形なのに、どこか有機的な印象になるデザインを心がけています。自分の内側にある『思い』のようなものが形になったとき、目には見えない何かを、見る人や使う人に感じてもらえると思うんです。」
インタビューを終えて:シンプルでさりげないのに、どこか印象に残る「レザータッセル」
KAKURAの石原さんが、一般的なカーテンタッセルに物足りなさを感じ作り上げた、磁石入りのレザータッセル。しっくりと窓辺に馴染みつつも、唯一無二の存在感を感じられます。
フックや紐ではなくマグネットで留めるのもユニークな点。カーテンをまとめる動作がワンアクションで済むので、カーテンに彩りを添えるという面だけでなく、楽さという面でも優秀です。「シンプルな形なのに、どこか有機的なデザイン」という石原さんのこだわりが詰まったタッセルでした。
今回のつくり手の商品一覧
今回ご紹介したものは、つくり手さんご自身用のため非売品となっております。現在お取扱いしている商品は下記のリンクをご覧ください。革の風合いを楽しみつつ実用品としても活用できるものが、多数揃っています。
文・構成/上野智美
スタイルストアのお客さまに、日々の暮らしをアップデートするコツや、商品の選び方などのノウハウをご紹介するコラムをお届けしています。