インタビュー&ゲストコラム
銘木のお椀が生まれる、山と田園に囲まれた工房を訪ねて(後編)
銘木(めいぼく)のお椀のつくり手
薗部産業さんのものづくりへの思いや、
どんな風に作られているのかを
ご紹介しているこちらのコラム。
前編では薗部さんの歴史を中心に
お伝えしてきました。
ここからは、当店限定の銘木のお椀を
職人の親方が挽いて下さっている様子や
工房の中をご案内しますね。
いざ、現場へ!
まず工房に入る前に圧倒されたのが、
敷地内に高く積み上げられた
たくさんの木の板や角状の棒。
薗部さんのお椀は、その年の冬に
伐った分だけを、無駄なく使うように
心がけて作られています。
木材は現在製材所から仕入れているそうで、
仕入れ後にここで乾燥させ、
加工が始まるまで出番を待っています。
工房の中へ進むと
工房に入ってすぐに遭遇したのが、
木材を切るための大きな機械。
ここで作るもののサイズにあわせて
カットされます。
内側と外側を削る荒木取り
木取りした四角い木片は、その奥の場所で
ざっくりとした器の形になります。
この荒木取りをしてから乾燥させると
薄くなった分早く乾燥し、割れにくい
のだとか。
こちらはメンテナンスしたり、
改造を加えながら長年使っている
機械たち。
この他にも、同業者の方が使わなくなった
機械や部品を大切に保管し、使えるように
することもあるそうです。
乾燥は、使った時に長持ちするようにしっかりと
荒木取りしたものは、2-3カ月の間
外に置き、木の収縮がおだやかに
なるまでゆっくりと乾燥させます。
さらに、大きな乾燥室に入れて
数週間に渡って温度を管理
しながら機械で乾燥します。
(ちなみに、木片を燻して
燻製乾燥している機械もありました)
機械管理といえども、乾燥の度合いは
最後は人の経験によって判断するの
だそうです。
その後、さらに半年にも渡って乾燥させ、
木の状態が落ち着いて準備万端に
なるまで待ちます。
乾燥すること約10カ月。
この時間を決して端折らず、
木の状態をしっかりと見極めて
辛抱強く待つことで、つかい手の
暮らしの中の一員となった時に、
割れにくく長持ちするのですね。
親方が削る現場へ
そして、ついに削りの現場へ
やってきました。
その国内最高といえる技術の高さから、
薗部さんも全幅の信頼を寄せているのが、
この道40年の職人の親方・池谷貞男さん。
池谷さんの、美して早く、正確な
その仕事をぜひ動画でご覧ください。
積みあがったこれらも、池谷さんが削ると
あっという間に器になっていきます。
削り出した直後のうつわたち。
摩擦熱でしばらくはあたたかく、
まさに出来立て。
この後、内側も削り出され、
ウレタン塗装+乾燥して梱包後、
スタイルストアへやってきます。
こちらは道具の数々。
道具は職人さん自らが使いやすいように
自作し、メンテナンスをするのだそう。
工房の外には道具作りのための
鍛冶場もありました。
これからのこと
ちなみに、節や木目のシミなどは
挽いてみて出てくるもの。
なので、これだけの歳月を費やして
出来上がっても、10個挽いたうちの
2ー3個しかA品とみなされるものはなく、
残りの7割は、使うのには問題ない
けれども木目の個性が強すぎるとして
B品と判断で、人の手に渡らないことも
多々あるのだそうです。
こういう部分をうまく解決できたら。
当店でも何か一助になるような企画が
できたら良いなと考えています。
薗部さんの誠実なものづくり、
この機会に少しでも知っていただけたら
嬉しいです。
いつもの暮らしがちょっと心地良くなるようなものやこと、つくり手の思いやものづくりのストーリー、その地域ならではの話をお伝えしたいなと日々考えています。