インタビュー&ゲストコラム

【つくり手インタビュー】創業63年、本気のざる屋による台所革命

2026年02月24日更新


「誰もザルのことなんて考えていないんですよ」と言うのは、創業63年を迎える新潟のキッチン用品ブランド「Three Snow」の本多由紀子さん。盆ざるやヨーグルトポットなど「ざる」をキーにした道具に定評があるのは、金網づくりを生業としてきたメーカーだから。しかし、冒頭の台詞のように、ざるという存在は、あって当たり前、メインというよりサブ的位置付けで、確かに少々影が薄いかもしれません。ざる屋のプライドをかけて開発した品々の生い立ちを聞きました。

Three Snowを紐解く3つの商品

金網の町・燕市から生まれた「ざる屋」という原点

Three Snowのことを語るとき、私は「うちは『ざる屋』なんです」とお伝えしています。Three Snowの運営元である新越ワークスは、金網づくりを生業にしてきた会社で、今年で創業63年。新潟県燕市の工場では、今も金属の線材や網を加工しながら、業務用のざるや調理道具を作っています。

新越ワークスは長年ラーメン屋さんの必須道具「てぼ(振りざる)」を作ってきた


私が企画営業として働く「Three Snow」は、業務用で培った技術をいかし、一般家庭向けにリデザインしたキッチン道具のブランドです。一つ特徴的なのが、我々には「企画部」とか「デザイン部」というモノづくり専門のチームがありません。私のような、いわゆる「営業」の人間が、スタイルストアさんのようなお客さまと直接つながっているお店の声を聞きながら、製品づくりを行っています。商品開発や改善のヒントの宝庫「つかい手の声」も全部読んでますよ。

「ざるの可能性」をもっと知ってほしい

冒頭の「ざるのことを誰も考えていない」というのは、私が長く感じてきた思いです。「便利なざる、使いにくいざるは何が違う?」とか、一般の方が考える機会ってまずないですよね(笑)。家にあるざるをなんとなく使い続けている方が多い。ざるってそんな存在だと思います。

でも、線の太さや網目、深さや形が少し違うだけで、ざるの使い勝手は大きく変わります。下ごしらえがぐっとスムーズになって、台所仕事がぐっとはかどる。

今回はThree Snowを代表する20年選手のざるを中心に、日々のご飯の下ごしらえを快適にしてくれる3点を選びました。ざる屋がこだわったキッチン道具を、ぜひお手に取っていただくきっかけになったらうれしいです。

【NO.1】セットだから便利!購入者満足度NO.1は「フタ付ざるボウルセット」

ざる屋の本気!「強さ」と「スムーズさ」を追求したロングセラー

このセットのメインになっているのが、20年以上前から作り続けているざる。一般的なざるのように補強線や後付けの脚を使わず、網そのものの強さで形を保つように設計しています。そのために選んだのが、0.47mm×16メッシュという当時としても思い切った仕様の網でした。


社内には「ここまでハイスペックにする必要ある?」という声があったのも事実。でも、補強線がなければスポンジが引っかからず洗いやすい。脚を後付けしなければ、汚れが溜まりにくく衛生的。毎日使う道具だからこそ、小さなストレスを減らすほうが快適さに直結すると思って、この仕様に振り切ったんです。

フタが加わることで、下ごしらえがシームレスに

このセットの画期的なところは「蓋つき」という点です。ざるとボウルを重ね、そこにフタが加わった瞬間に「水切り→下ごしらえ→保存」まで一連の工程が完結するようになりました。粉付けのプレートとして使えたり、一時置きにも使えたりと、ざるの役割が一気に広がった道具でもあります。


フタがあることでできることも増えます。葉野菜は水気を切ってそのまま冷蔵庫へ。食卓に出す直前まで冷やしておけるから、シャキッと美味しいサラダに仕上がります。冷蔵庫の中ではフタの上にものを載せられるのも便利。


調理中は、複数のサイズのボウルとざるを並行して使いますよね?水を切る、冷ます、和える、粉をはたく…蓋、ざる、ボウルの3種3サイズがセットであるからこそ、台所仕事の多くの工程をカバーする道具になりました。

セットで買う価値がある、とお客さまが教えてくれた

ざるとボウルをセットで揃えられている方は意外と少なくて、途中買い足しながら、バラバラのブランドや素材のものを組み合わせて使っている方がほとんどです。だからこそ「フタ付きざるボウルセット」を使われた方は、セットでぴしっと快適に使える使用感に感動してくださいます。


「自分が使って良かったから、娘やお嫁さんに贈りたい」とギフトに選ばれる方も多いんですよ。セットで揃うことでスムーズに調理ができることを実感して頂けている証拠かなと思います。オーバースペックと言われながらも、妥協せず形にしたこのセット、購入頂いた方の満足度が高くて本当に嬉しいです。

【NO.2】スタイルストアのリクエストで誕生した、ザルせいろセット

フライパン蒸しの不便から生まれた「ざるのせいろ」

この商品は、スタイルストアのバイヤー畠田さんに「蒸し道具、ほしいんですよね」と言っていただいたことが出発点でした。当時、フライパンで使う蒸しざるが人気でしたが、実際に使うと「足が低くてすぐ水がなくなる」「途中で注ぎ足さないといけない」というストレスがあったんですよね。


商談後、ショールームでざると鍋を眺めていたときに、「手持ちの鍋に合わせた蒸し道具ってないな…」と気づいたんです。鍋なら深さがあるので、足を2cmまで高くできる。さらにハンドルをつければ取り出しやすい。

「もしかして、ざるの形状を活かせば、フライパン蒸しの不便をすべて解決できるのでは?」

そんな発想で生まれたのが、この「ざるせいろ」です。

せいろの良さを残しつつ、普段使いに寄り添う形へ

浅型と深型の二段セットにしたのは、竹のせいろのように「重ねる」楽しさを残したかったから。とはいえ浅型の脚の形状は製造が難しく、発売までに1年かかってしまいました。それでも形にしたかったのは、せいろのように蒸し、ざるとして湯切りもできる…そんな「両方の良さ」を持たせたかったからです。


実際、浅深セットなら調理の幅がぐっと広がります。印象的だったのが畠田さんの使い方で、上段で麹豚を蒸し、下に落ちた旨みを生かしてスープを作る二品調理。あれには本当に感動しました。「ざるで蒸す」からこそ生まれる発想で、まさにこの商品の良さを引き出していただいた使い方ですよね。


名前を「ざるせいろ」にしたのも、誰にでも蒸し料理のイメージを伝えられる言葉だと思ったからです。そのうえで、ざるとしても蒸し道具としても使えるThree Snowらしい実用性も込めています。

蒸し料理が日常に…劣化しないから長く使える

竹せいろは雰囲気があって魅力的ですが、どうしても寿命が短く、歪んだりカビやすかったりと扱いに気を遣います。「長く使いたい」「できるだけゴミを出したくない」という方にはハードルが高い道具なんですよね。その点、ざるせいろは金属製なので劣化しにくく、カビない。下準備もいらず、食洗機にも入れられます。


平日の夕飯で「もう一品ほしいな」というシーンでも、ちょっと蒸すだけで簡単にできあがるのもいいですよね。ひとつの道具を長く使いたい方、多用途で使える道具を好む方には特に向いているのではないでしょうか。暮らしの道具は最小限にしたいというミニマリストの方にも、きっとしっくりくる道具だと思います。

【NO.3】ざる屋がこだわった、ざるじゃない道具「計量スプーン」

「料理が苦手だからこそ、ちゃんと測りたかった」

3つ目の製品は、ざるではなく、計量スプーンです。実は、あまり料理が得意ではない私自身の悩みから、この製品の開発を始めました。


私は「味付け」に苦手意識があるので、調味料をレシピ通りにきっちり計量したいんですよね。でも計量スプーンは、柄が短くて届きにくい、匙が丸いから瓶の口から入らない…湿気で固まった砂糖をガンガンと砕こうとして、柄が変形する…これ私だけはないですよね(笑)?
こんな、軽量にまつわるプチストレスをなんとかしたい、というのが「お料理上手な軽量スプーン」開発の出発点でした。

長い・頑丈・楕円・大さじ1/2、一本で全部解決

まずこだわったのが、小さな瓶に入る“楕円形”。顆粒だしやカレー粉の缶などに入りやすい形状にするだけで、計量のストレスが一気に減ります。


次に考えたのが、持ったときに自然と水平になる角度。一般的な計量スプーンは真っ直ぐなものが多く、手首をひねらないと計れません。でもそれだと手がぷるぷるしてしまう。そこで、スプーンをナチュラルに持ったときにちょうど水平になる角度を探り、板厚や首の太さを微調整しながら形にしました。


そして、どうしても入れたかったのが大さじ1/2(7.5ml)の線です。レシピではよく使うのに、意外とついていないスプーンが多いんですよね。大さじ1 も1/2も、できるだけきっちり量れる形にしようと、縁の立ち上がりや丸みの区切りまで細かく調整していきました。


そして最後が、砂糖の塊を砕く、カボチャの種取りなど、軽量以外の動作にも耐えうる頑丈さ。板厚を変え、細かい調整を重ねました。全長21.5cmと長めなので、煮込み料理の鍋に使っても熱くなりにくいというメリットもあります。

ざる屋の隠れた逸品、「本当はもっと知られてほしい」一本

Three Snowといえばやっぱりざるのイメージが強く、どうしてもこの計量スプーンは影に隠れがち。でも実際に使ってくださった方からは的確な感想をいただけて、私自身驚くことも多いんです。

「小さな瓶にそのまま入るのが本当に助かる」
「砂糖を思いっきり砕いてもびくともしない丈夫さで安心!」
「先が細いからアク取りにも使いやすい。ピンポイントで取れるのが気持ちいい」
「柄が長いので、スプーンを鍋に入れるときも熱くない」

こんなふうに、困っていたところが楽になったという声を多くいただきます。


ざるのように目立つ存在ではありませんが、計量や下ごしらえでのプチストレスをなくしてくれる道具なんですよね。私自身も、完成した時に「もっと知られてほしい!」と素直に思った一本です。お料理が好きな方はもちろん、私のように料理に苦手意識がある方にこそ手に取ってもらえると、きっと「料理のハードルが少し下がった気がする」と感じてもらえるのではないでしょうか。

ーーー

以上、Three Snowの企画営業である本多由紀子さんに「Three Snowを紐解く3つの商品」についてお聞きしました。プライドをかけて開発した自信作「フタ付きざるボウルセット」、スタイルストアのリクエストがきっかけで誕生した「ざるせいろ」、そして意外にも3つ目はざるではなく(笑)、本多さんご自身の悩みがきっかけで誕生した「お料理上手な計量スプーン」。改めてこのラインナップを見てみると、台所仕事に真摯に向き合う、Three Snowの本質が象徴されているように思えました。

台所道具はどれも似たように見えて、実際に買って使ってみるまで「リアルな使用感」がイメージしにくいものですよね?Three Snowは、どれも購入者の評価が非常に高く、ブランドのファンであることを公言するお客さまも多いことから、製品を通してつかい手の信頼を得ていることが良く分かります。

プロユースの道具を作ってきた歴史があるからこそ、一般家庭用に作られたものでも「一生もの」として付き合えるほどしっかりしています。例えば刃物の場合、プロ用の道具となると価格もぐっと上がりますが、Three Snow製品は手ごろな価格でハイスペックな道具を台所に迎え入れることができます。

盆ざるヨーグルトポットなど、ざるが主役の製品はもちろんのこと、うがいカップ歯ブラシスタンドなど、衛生用品でも名品を生み出しているThree Snow。今回のインタビューを機に、彼らの幅広い仕事ぶりに目を向けて頂く方が増えたら、私たちとしても大変嬉しいです。

このコラムを書いた人

柳沼 周子

スタイルストア バイヤー

柳沼 周子

大手小売業で服飾雑貨のバイイング、新規ブランド開発を行う。その後活動の場をインターネットに移し、2006年にスタイルストアへ参加。 得意ジャンルは服飾雑貨、最近は地方の名品発掘がおもしろくて仕方がない。モノの背景を知ってこそ見える、真のお買い得品をセレクトする、これが信念です。