みんなの愛用品
大久保さんのへらが、どんな人でも使いやすい理由
こんにちは、バイヤーの畠田です。
当店でもおなじみ、大久保ハウス木工舎さんの調理道具。「自分で使っていてとても使いやすいから贈り物にしたくて」、「大久保さんの他の調理道具を既に持っていて、他のツールもきっと使い心地が良いんだろうなと思って」など、「実際に使ってみて良かったから他のものも買い求めたい」というつかい手が本当に多いのです。
かく言うわたしも、その一人。2016年にジャムスプーンを使い始めて、瓶のカーブに沿ってジャムを最後まで無駄なくすくえる気が利いた形に感動し、それ以来、大久保さんの作るツールを少しづつ揃えています。
そんな中でも、「桜の木のへら」は、大久保さんの代表作といっても過言ではない一品。つかい手からも「他の木のへらと比べて、これは本当に使いやすい」と絶賛の声を多くいただいていますが、この使い勝手の良さはどこから来るんだろう、と考えてみました。
調理中、無意識に持ち方を変えている
大久保さんは、つかい手と話す度に「どんな風にへらを持つか」を尋ねて、さまざまな持ち方をすることを知り、どんな持ち方をしても違和感のないような持ち手を追求していったんだそうです。
「普段自分がどんな風にへらを持っているか」なんて意識したことなかったのですが、改めて自分の使い方を観察してみると、無意識にシーンに合わせて持ち替えていることに気が付きました。
浅いフライパンでキャベツや玉ねぎなどの軽い食材を炒める時には、鉛筆持ち。軽く握るようにして、手首で食材を返していました。
でも、フライパンから料理をお皿にうつす時には、持ち方は上から握るような形に。この持ち方をすると無理のない手首の角度で、フライパンの中の食材をうつすことができます。
カレーやポトフなど、ごろごろとした根菜を炒める時には、下から握るような形に。こうやって握ることで、へらが垂直になるので深さのある鍋でも使いやすく、しっかり握れて力が入れやすいので重さのある食材でも返しやすいのです。
炒める食材の重さ、フライパンや鍋の深さなど、さまざまな要因で無意識に変えていた、へらの持ち方。「どんな人でも使いやすい」だけでなく「どんな料理やシーンでも違和感なく持てる」ことが、人を選ばず使いやすいと感じさせてくれる大きな要因なんだと思います。
切り立った先端はターナーのような役割
まっすぐに削られたような形の先端も特長的ですよね。使いはじめた時はなんでこんな形をしているんだろう、と思ったのですが、使ってみるとこの「先」の活躍シーンの多さに納得しました。
例えば、一口大に切った鶏肉がフライパンにくっついてしまった時には、この先端でこそげてひっくり返す、など、ターナーのような役割をこなしてくれています。ブーメランのような形をしていて鋭角になっているからこそ、細かい作業がしやすいようになっています。木製なので、こそげた時にフッ素樹脂加工のフライパンや琺瑯の鍋にやさしいのも嬉しいポイント。
他には、ひき肉を切るようにしてほぐしたり、ホールのトマト缶を潰したり。一般的なへらだとやりにくかったり、時間がかかったりする作業も、この先端の鋭角があるおかげでツールを持ち変えることなく調理することができます。
フライパンや鍋を選ばない曲線
そして、ここが素晴らしい!と多くの絶賛の声をいただいているのが、このカーブ。一度にたくさんの具材をキャッチできて、炒めて返す動作がスムーズです。
このカーブが不思議なことに、本当にどんなフライパンやお鍋でも使いやすいんですよね。深さのある鍋の時は、立てて使い、浅いフライパンの時は寝かせ気味に使えば、どちらも鍋肌に沿って具材を集めてくれます。チャーハンのご飯や玉ねぎのみじん切りなどの細かい食材も逃さず一度に返せるので、返しにくい箇所が残って一部焦がしてしまった、ということも起きにくいです。
大久保さんのこだわりは、「刀物で仕上げる」こと。一般的な木のカトラリーはやすりをかけてツルツルにしたり、塗装をしたりするのに対して、木を刃物で切っただけ、というシンプルで昔ながらのつくり方。やすりをかけないことで、木に細かいキズが入らない為、水分が沁みこみにくくなり、雑菌やカビなどの繁殖を抑えてくれます。実際、長く使っていてもすべすべと心地よい木肌は変わらいまま。少しづつ色が変わってきて、どんどん愛着もわいてきます。
ツールひとつで調理のしやすさってこんなに変わるんだなあ、と思わせてくれる、手仕事の良さが光る道具。左利きの方用のへらを作ってくださっているところも、大久保さんの心遣いを感じます。ぜひ手にとって握ってみていただきたい一品です。
ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。