インタビュー&ゲストコラム
【あの人の暮らしぶり】宇南山加子さんが作る、かっこよくもあたたかい道具たち
当店がいただいてきた多くのご縁の
中から、仕事もそれ以外も含む
「暮らしぶり」全般が素敵だなと
感じられる方々をご紹介する
「あの人の暮らしぶり」。
第3回めにご登場いただくのは、
日常生活のプロダクトデザインから
企画開発、空間デザイン、
スタイリングまで、国内外で幅広く
ご活躍されている宇南山加子さんです。
日本にしかない丁寧な職人仕事に
魅了されていた宇南山さん。
オリジナルブランド
「SyuRo(シュロ)」をはじめとして
職人の技術を私たちの生活の道具に
落とし込んだ、かっこよくも、
あたたかい、素敵なものづくりを
展開されています。
第1話の今回は、SyuRoの店舗を訪れ
ブランドを始めた時のことや
大切にされていること、
宇南山さんが作る道具の魅力について
お話を伺ってきました。
「SyuRo」のはじまり
ブランド名の「SyuRo」は、
ほうきなどの暮らしの道具に
よく使われる棕櫚(しゅろ)の木
から着想して名付けられたのだそう。
身近な植物を使って生活に寄り添う
道具を作りたいと思った宇南山さんが
まず作り上げたのは、あたたかみのある
こんな木製アイテムでした。
ジュエリー職人だったお父様が
原型を作ったという、
繊細で美しいブックマーク。
木製ならではのやさしい手触りで
本やノートを開くたびに、
そのぬくもりが伝わってきます。
こちらは、宇南山さんのお子さまが
幼い頃、もので散らかってしまうという
悩みを解決するために作った、
収納付きの子ども用椅子です。
スタッキングもできて便利。
指でふたが開けられる、シンプルで
実用的なデザインになっています。
“自らの手を使って空間を変えたかった”
宇南山さんは、学生時代に
木工や金属などの素材の勉強をしながら
生活デザインに興味を持っていた
と言います。その後、
師匠となる空間スタイリストさん
との出会いから、
「一本の枝でさえ、
空間を美しく変える力がある」
ことに衝撃を受け、
自分の手を使って空間を変えること
へのこだわりを形にしてきました。
こうして、宇南山さんは
日本人の持つ繊細なセンスや美しさ
などをものに置き換えて
その魅力や価値を人々に
訴えていくためにブランドにしようと
決め、SyuRoを誕生させました。
日常使いの素敵な道具で、暮らしを豊かに
宇南山さんがデザイナーとして
大切にしていること。
それは、かっこよくも気取りすぎず
「日常に使えるもの」を作ること。
SyuRoの店内には、
日本人ならではの“削ぎ落とす”という
美意識と思いやりが詰まった
たくさんのアイテムが並びます。
料理やお皿の種類を問わず合わせやすい
木製のなべ敷きやカトラリー。
カトラリーの柄は、毎日
触っていたいほど
心地よく加工されています。
ギフトにもぴったりの
オーガニックタオル。
男女ともに選ばれるアロマや
アメニティグッズも豊富です。
実際に男性のお客様も多いそうです。
SyuRoでは、老舗の手縫い糸屋さんで
有名な、ダルマ糸のブランドを
ブランディングしました。
糸はギフトとして海外でも人気。
ポップなデザインは
飾っておきたくなる佇まいです。
石でも鉄でもない焼き物
「炻器(せっき)」は、新作の器です。
どんなシチュエーションにも対応できるように
素材感を大切にして作られました。
日常使いにぴったりで、耐熱になっているので
オーブンでの使用も可能。
使い込むほど色の経年変化も楽しめます。
シンプルでかっこいい器ですね。
台東区で活動しようと思ったきっかけ
宇南山さんのアトリエ兼店舗と
ご自宅のある台東区は、昔ながらの
工場がひしめきながらも、
作家や建築家などの“ものづくりのプロ”
たちが多く住まう文化の街。
実は宇南山さんも、
この街のご出身です。
「ものを作ろうと思った時、
“困ったらこの人に聞こう”と
すぐに相談ができるような、
身近にものづくりのコミュニティ
がある空気感がとても好きだった。」
と宇南山さん。
昔から台東区は、ものづくりが
盛んだったので、職人の技術が
溢れていました。アートや文化が
ミックスしたこの街で、日本の
伝統文化などをSyuRoのフィルター
を通して、身近な道具に変えて
伝えていきたいと語ります。
店舗をオープンしたのは2008年。
徐々に海外とのお付き合いも増え、
アトリエだけでなく出荷場やカフェ、
展示会会場などにも活用できるよう、
現在の店舗を改装しました。
表通りではなく裏路地にしたのも、
知っている人に来て欲しいという思いから。
SyuRoのアイテムは、パリで有名な
ライフスタイルショップのひとつ、
「Merci」にも置かれています。
日常的に使えるシンプルなアイテムが多く
空間そのものが訪れる人の心を踊らせる、
そんなMerciの空間作りに惚れ込み、
商品を置いてもらうために
何度も足を運んだそうです。
Merciで販売され、あっという間に
ヨーロッパの人もファンになった
というアイテムは、
この「ブリキの缶」。
プロカント好きなパリの人びとの
暮らしにもすんなりと馴染みそうな
デザインとカラーです。
小物収納や、キッチン周りの
整理アイテムとして見せて
置いてもかわいいですね。
インダストリアルな空間の中に
あたたかく丁寧なアイテムが
並ぶ店内は、どこか心地よくて
長居してしまう空間でした。
SyuRoのアイテムが、
手に取った人の暮らしのスタイルに
ぴったりと寄り添うもの
であって欲しいと願う宇南山さんは、
「空間もまるごと楽しんでもらえる
ようなものづくりがしたいです。」
と、改めて思いを語られていました。
次回は、宇南山さんにおもてなし
レシピをご紹介いただきます。
料理の色を引き立てながら、
器のコーディネートまで楽しくなる
「炻器(せっき)」の魅力にも迫ります。
「あの人の暮らしぶり」
SyuRo 宇南山加子さん編
【序章】