インタビュー&ゲストコラム
【つくり手を訪ねて】100年使える家具「KOBAKO」の魅力 前編
当店でお取扱いしている家具の中に、「KOBAKO」というかわいらしい名前の収納家具シリーズがあります。
ボックスや引き出し、天板などのラインナップがあり、使う場所や用途に応じて、自由に組み合わせて使うことが出来るユニット家具。飛騨高山で40年以上に渡り、木と向き合い、昔から受け継がれる伝統工法を用いて家具造りをしてきた、オークヴィレッジの製品です。
KOBAKOは、当店でも8年以上変わらぬ人気を誇るロングセラーアイテム。今回はオークヴィレッジの副社長であり、製品の企画開発から森を守る活動まで、幅広くご活躍中の佐々木さんにお話を伺ってきました。
適材適所でつくりあげる木工品
バイヤー畠田(以下畠田):今日はありがとうございます。まず最初に、佐々木さんご自身のお話からお聞きしていいですか?
オークヴィレッジ佐々木さん(以下佐々木さん):オークヴィレッジ株式会社は設立して41年になります。私自身は、もともと大学で意匠系の建築をやっていまして、その後、飛騨の木工職人養成学校に入りました。そこで2年ほど木工の勉強をしたことをきっかけに、家具の世界に入ったのです。縁あってオークヴィレッジに入社して、今年で21年になります。
畠田:佐々木さんも職人さんだったんですか?
佐々木さん:はい、企画・デザイン、実際に手を動かして造るところまでやっていた時期もあります。木というのは実におもしろい素材で、魅力もあるし、家具なんかにしてもすごくいいんですけど、一方ものづくりという面では厄介なところも多いんですね。樹種によって全然特性が違うし、ちゃんと見極めて使わないと、製品にした後で反ったり割れたり、と後から不具合が出てくる。
畠田:木を切ってから、ちゃんと乾燥させないと使えなかったり、制作前の準備にも時間がかかりますよね。
佐々木さん:おっしゃるとおりです。だから扱いにくいというか、手間のかかる素材ではあるんです。でも、逆にその制約条件をうまく解決してやると、ものすごくいいものができる。日本人は昔から、木の特性をよく知り、それに合わせた工法を開発し、上手に暮らしの中に取り入れてきました。
僕は、よく木工職人と料理人は似ているなと思うのですが、腕のいい料理人って、素材を見極めて、その持ち味をいかした料理を作るでしょう?私たちの木工もまさにそう。紅葉の時期の森の美しさを見ても分かるように、日本の森は木の種類が実に豊富で、さまざまな木材が手に入ります。だから特性に応じて木を選ぶことができるし、適材適所で木を使い、樹種に応じた工法や道具を開発してきた、という歴史的な背景があります。
ですから、僕たちのものづくりに関しても、とにかく「適材適所」で木をうまく使ってやりたいというのがある。木の持ち味が最大限にいかされるような使い方をし、木の良さが形と相まって、完成度の高いプロダクトになる、そういうイメージで設計・制作を行っています。
畠田:なるほど。KOBAKOシリーズでいうと、どんな「適材適所」になっているのですか?
佐々木さん:KOBAKOのメインの素材は北海道産の無垢材で、樹種はニレかタモですね。いずれも丈夫で、木目の美しい木です。シリーズの中でもKOBAKOのような箱型のアイテムは、4枚の板を「蟻型千切留接ぎ(ありがたちぎりとめつぎ)」という工法で組んでいます。
この「千切」というパーツにはシュリ桜を使っています。硬くて密度の高い材なので、こういう役割に向いているんですね。
畠田:蟻型千切には、デザイン的な美しさもありますね。
佐々木さん:そうなんです。この技法によってより頑丈になるし、木の反りや歪みを抑えてくれるんですね。釘やネジなど金属を一切使っていないので、長年使っても基本的に劣化したり壊れたりすることがありません。高い技術を要する凝った技法なんですが、それが控えめなデザインに落とし込まれているところに、古来の日本人の美意識を感じますね。
第1回 「適材適所」で生まれる美しい木工品
第2回 オークヴィレッジにしかできないものづくり
佐々木一弘さんプロフィール
オークヴィレッジ株式会社 取締役副社長。
大学で建築を学んだ後、飛騨高山で木工技術を習得しオークヴィレッジに入社。
商品開発に長く携わり、プロダクトデザイナーとしてreddot Design Award、IF Design Award、グッドデザイン賞など受賞多数。
現在は林業と木工の高次元の融合を目指す新しい取組み「根尾の広葉樹活用プロジェクト」をはじめ、各地で同様の取組みを推進。規格外広葉樹の活用や森林育成に積極的に取り組んでいる。
ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。