インタビュー&ゲストコラム
歴史の中で育まれた美しいものを愛する全ての方々に
sunao デザイナーの河本です。
西陣織といえば、、、
金糸をふんだんに使った
きらびやかな絹織物。
そんなイメージをお持ちの方が
多いのではないでしょうか。
実は私自身も、つい最近まで
そう思っていました。
岱﨑(やまざき)織物さんと
お会いするまでは。
初めて京都の工房を訪れて、
「復元織」のサンプルを拝見した時の
あの衝撃を、私は一生忘れないと
思います。
口金長財布「Jardin eternel」に
使われている「復元織」とは、
正倉院裂・古代裂・
古い裂を再現することを目的に
作られた、岱﨑織物さんが
独自に考案された織物です。
歴史的にも貴重な名物裂の文様や
色調をもとに、経糸を2度染め、
絣調に仕上げられたざっくりとした風合い。
昔ながらの力織機で製織しているため、
大量生産には向いていません。
京都西陣の地で手間と時間をかけて
制作されている、岱﨑織物さん
オリジナルの裂地です。
また復元織はもともとは古い掛軸表装の
レプリカや修復のために織
書や日本画など日本美術に寄り添う存在
として、日本文化の粋を支えてきた
由緒を持つ裂地でもあります。
は、シルクロードから伝来した柄。
はるか昔の文様なのに、今見ても
とても新鮮です。
まるで長い時を経たかのような
色味は、多色の縦糸と横糸を
精緻に組み合わせることによって
表現されています。
そして、見る角度によって、
ほのかに布の色が変わります。
絹織物ならではの繊細な
ニュアンスは、PCでは伝えるのが
難しいので、本当はぜひ実物を
手にとっていただきたい!
お花は淡黄と璃寛茶という
日本の伝統色ですが、和の枠に
とどまらず西洋のヴィンテージ
ファブリックのようにも感じられる、
ノスタルジックで優しい雰囲気。
きらびやかな金襴とは相反する
侘び寂びの風情。決して派手な
布ではないのだけれど、
時を忘れてただ、ずっと眺めて
いたくなります。
この裂地は、この財布「Jardin eternel」
のために特別に織り上げていただいたもの。
声を大にして言いたいのですが、、、
これは本当に贅沢で稀有なことなのです。
ならなおさら、今回の裂地開発がいかに
スペシャルな仕事であったか、
理解していただけるかと思います。
美しさを秘めた西陣織。
しかし現在では技術者の
高齢化や後継者不足により、
その技術が失われつつあります。
数知れない戦乱の世をくぐり抜け
伝わった日本の美しいものが、
私たちの世代でなくなってしまう
かもしれない。。。
その現実にただただ悲しくなります。
伝統的な手わざに支えられた
日本の美しいものって、みんなどこか
儚くて、いつまでもそばにあると思って
心配りを忘れていると、ふと消えて
無くなってしまうものなんだと思います。
日本の美しいものに気づいていただく
きっかけになれば、つくり手として
心より嬉しく思います。