インタビュー&ゲストコラム

【第一回】旭川で作られる木工品のストーリー cosineインタビュー

2016年03月07日更新

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田んぼと山に囲まれたのどかなまち、北海道・旭川で、人と木のぬくもりが伝わってくる木製品を作り出すcosine(コサイン)。

「暮らしの中で長く使える生活道具をつくる」というコサインが大切にしているものづくりの考え方の通り、長年愛されている商品をたくさん生み出しています。当店でもお馴染みの「ドレスラック」をはじめとして、「持ち運びミラー」、「エントランスツール」など、どれも使う人に寄り添ってくれるあたたかみのあるものばかり。
そんな数々の製品が生み出されるまでのストーリーや、当店の商品ページでは語りきれない魅力についてお話を伺ってきました。


「作ること」と「伝えること」を経験して

―――宮川さん、今日は宜しくお願いします。商品のことを伺う前に、少しだけ宮川さんご自身のことについてお聞かせいただけますか?

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今回インタビューにお答えくださったコサインの宮川さん。

わたしはコサインに入社して、16年になります。
今は卸売事業部の係長として働いていますが、元々は、旭川の工房で黙々と製品を作る職人でした。作っては出荷して、作っては出荷して・・・と、忙しく製作が続くので、その時は目の前にある製品を美しく仕上げることに必死でしたね。

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旭川の工場が描かれた、オフィスの黒板。

直接お客様とお話をするようになってからは、職人時代には考えてもいなかったようなご意見を聞かせて頂いたり、改めて商品の良さに気付かされることが多いんです。前以上に、コサインの作るものを魅力的に思うようになりました。

―――製作と営業、どちらも経験したからこそですね。

ええ。コサインの技術力の高さや、仕上げの美しさへの熱意についてはお客様に自信を持って伝えられます。なんといってもわたし自身が、こだわりをもって製品を作っていましたから。

銀座のウィンドウで見染められた「ドレスラック」

―――「コサインと言えば、ドレスラック」というほど、コサインとドレスラックは結びつきの強い商品ですよね。発売して何年になりますか?

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1993年発売なので、23年。コサインが創業28年なので、特に古株ですね。わたしの入社前から人気商品でした。でも、発売当時からいきなり人気がでたわけではないんですよ。たくさんの人に知ってもらえるようになったのには、あるきっかけがあって。

―――どんなきっかけですか?

実は、松屋銀座のデパートのショーウィンドウで、お洋服を見せるための什器として使われたのが、ドレスラックが人気になったきっかけなんです。その時はあくまでメインはお洋服だったんですけど、そのウィンドウをご覧になった方から「あの什器はどこで買えるんだ」という問い合わせがたくさん入ったらしくて。

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―――当時はドレスラックって珍しいものだったんですか?

全くなかったわけではないんですけど、選択肢は少なかったですね。今みたいに、いろんなデザイン・価格帯の中から選ぶことができるアイテムではなかったです。

―――先見の明があったんですね。そもそも、そんな時代になんでドレスラックを作ろうと思われたんでしょう?

ドレスラックの発想の元になったのはヨーロッパの「キルトラック」です。タオルやお洋服を掛けておくためのものなんですが、日本にはなんでこういうものがないんだろう、と弊社の社長が思ったのが開発のきっかけでした。

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着物を掛ける「衣桁」にもヒントを貰いました。これが日本でいうドレスラックですが、現代の洋服文化には合わない。そもそもお洋服を外に出して収納するっていう習慣って、元々日本にはあんまりなかったんですよね。「出しっぱなしで使えるお洋服収納」というのは、当時は画期的だったのかもしれないです。

―――23年間の間で、何度か仕様変更を経て、どんどんブラッシュアップされていますよね。

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そうですね。一番最近の変更点は、ドレスラックの足下に渡している丸棒の位置をすこしだけ上にあげたことです。なんでだと思います?

―――なんでだろう・・・掃除をしやすくした、とか?

半分正解です。実は「お掃除ロボットが入らなくて困る」という声をお客様から頂くようになって、お掃除ロボットが入る高さに調節しました。

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―――ああ、なるほど!

こうやって時代によって少しづつニーズや要望が変わってきますので、都度それに合わせた仕様変更を考えたりします。景気が良い時には色味の濃いものが売れるとか、優しい色が流行っていた時はチェリーが売れたりとか。

―――23年も販売しているからこそ、時代による違いも感じ取れるんですね。

そうですね。お客様の声に応じて、ストールを掛けるためのフックができたり、バッグを置けるトレーができたり、お揃いのハンガーを作ったり。ドレスラックは構造的にもシンプルなので、いろんな要望が反映できるんです。

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シンプルだからこそ、大変なこともあります。ドレスラックは裏表や正面がないデザインなので、隠せるところがないんですよね。
他の製品だと、節のある木材はなるべく目立たない位置に使ったり、と木材を使い分けたりできるんですけど、全方位から見られるようになっているから、どこもごまかせないんです。

―――使える木材を選ぶのは大変じゃないですか?

ええ、木材はどうしても反りがでてくる。その反りを最小限に抑えるために、木材に熱をかけたりして矯正するんです。木材の性格も1枚1枚違うから、あっちへ曲がったりこっちへ曲がったり。

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中にはどれだけ矯正してもまっすぐになってくれない頑固な木材もあるんですけど、その木材の特性を見極めて使えるところに使う。いわゆる「適材適所」ですね。
わたしたちが大切にしているのは、どんな木材でも、「仕入れたからには余さず使い切ること」です。長い年月をかけて育った木を使うからには、長く生活に寄り添える製品を作りたいですからね。


第一回:銀座で見初められた「ドレスラック」
第二回:雪国の発想で生まれた「玄関まわりの道具」
第三回:コサインの思いやりが詰まった「持ち運びミラー」

cosinの製品一覧はこちら>>>


cosine(コサイン)

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株式会社コサインは「木」「つくり手」「使い手」が共にあるような、長く暮らしに寄り添う生活道具を作っています。木の素材感が際立つシンプルな美しさを大切に、確かな技術でものづくりに向き合い、長い年月をかけて育った木を無駄にせず、最後まで使い切る工夫をしています。そして、長くお使いいただくことを考え、お客様とのつながりを大切にしています。

このコラムを書いた人

畠田 有香

スタイルストア バイヤー

畠田 有香

ショッピングユニットでバイヤーをしています。その商品のどこが良いのか、なぜ良いのかを、わかりやすくみなさまにお届けしたいと思っています。