すみだモダン×スタイルストア
何が作りたいかを起点にしたモノづくりで生まれたオリジナルブランド
墨田の地で70年以上の歴史を持ち、世界初の技術を生み出してきた吉田テクノワークスの自社ブランドornament。海外でも反響のあったカードケースや厚さがたった0.7mmしかないミラーなどを展開しています。
そんなornamentの立ち上げ経緯やモノづくりに対するこだわりを代表取締役社長の吉田さんにお伺いしました。
技術の再確認とモノづくりへのヒント
ー会社の歴史を教えてください。
太平洋戦争から戻ってきた祖父が1946年に墨田で仲間と共に会社を立ち上げたのが始まりです。化粧品のコンパクトケースを作っており、当時曳舟にあった資生堂の工場までリアカーを引いて納品していたという話を聞いています。
その後、第二の事業としてウォークマンやリモコン、オーディオ機器といった電化製品のパネルを作るようになりました。その事業が成長したことで、2004年にコスメ向け事業を行う吉田プラ工業・吉田コスメワークスと電化製品向け事業を行う吉田テクノワークスに分社したのです。
ー自社ブランド「ornament」はどういった経緯で始められたのですか。
2008年頃、日本は携帯電話の全盛期で、日本の大手家電メーカーはこぞって携帯電話を作っている時代でした。吉田テクノワークスも携帯電話の筐体や画面部分を、自社で開発した世界初のインモールド成形技術で作り売上を伸ばしていました。しかし、徐々にiPhoneが普及するにつれて、日本の大手家電メーカーは携帯電話市場から撤退。吉田テクノワークスも次の市場を探す必要が出てきました。
その中で自社製品を作ることで、新しいモノづくりへのヒントが生まれるのではないかと考え、自社ブランドを立ち上げるという新たなチャレンジを始めました。
ー実際にブランドを立ち上げてみていかがでしたか。
自社の技術を再確認することができてよかったです。
例えば、厚みが0.7mmしかない薄型ミラー。ガラスだけだと危ないのでプラスチックを周りに流し込むのですが、厚みが出ないようにガラスの厚みの部分だけを端面で接着する特殊な技術を使っています。
女性はバッグに入れるものが多いので、できるだけかさばらない手鏡を考える中で、自社の技術を再確認することができました。
自社ブランドの売上はまだ全体の売上から見ると少ないです。しかし新しい技術を見つけることができたり、自社製品の開発から新たな仕事に繋がったりすることもあるので引き続きチャレンジを続けたいと思っています。
楽しいと思えるチャレンジを続けていく
ーラインアップの中の1つ、カードケースに関しても詳しく教えてください。どのような点にこだわって開発されたカードケースなのでしょうか。
カードケースにはサイドプッシュというグループ会社である吉田コスメワークスが特許を取得している技術を活用しています。また、ダブルインモールド成形という技術を活用することで、塗装では実現しない色彩と質感を可能にしました。
その他にも、押して開ける際にゆっくり開くようシリコンを入れていたり、最後の1枚が取りやすいようフラップをつけたりするなど使いやすさにもこだわっています。
2013年に販売開始し、2014年にすみだモダンの認証を受け、それに伴う海外販路開拓支援事業がきっかけでパリの有名なセレクトショップ「Colette」でも販売されるなど、ornamentのヒット商品に成長しました。
ちなみに、こちらは墨田区の＊「ものづくりコラボレーション事業」で開発した商品です。コラボレーターのアッシュコンセプト代表・名児耶さんとは現在でもornamentシリーズの商品開発を進めています。最近ではピアス等のアクセサリーの展開も始まりまして、テレビで取り上げられた際は大きな反響がありました。
＊ものづくりコラボレーション事業とは、高い技術力を持つ墨田区の事業者と世界で活躍するクリエイターとの商品開発事業のこと。
ーデザイン性や機能性にこだわって開発をされているようですが、その他にモノづくりにおいての大事にされていることはありますか。
自分達が作りたいものを作る、です。本来であれば、売れるものを作るべきですが、仕事とは楽しいものであるべきだと思っているので、何が作りたいかを大事にしています。
私たちは安く作るのは下手なのでコスト競争には勝てません。だからこそ他社さんができないことにチャレンジし続けて行こうと決めています。
ー最後に、今後の目標を教えてください。
良いものを作っている自信はあるのですが、想像したほど売れていない自社製品もあるのが現状なので、売り方を工夫することでより多くの人に届けていきたいです。ご縁があれば、売るのが得意な方とぜひご一緒したいと思っています。
吉田テクノワークスの全てのベースにあるのは社員です。社員が働きやすい環境を整えていくことを大事にしながら、新しいアイテムの開発にも注力していきたいです。
文・構成／松本佳恋
スタイルストアのお客さまに、日々の暮らしをアップデートするコツや、商品の選び方などのノウハウをご紹介するコラムをお届けしています。
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