唯一無二の鞄を育てる - 【PLAIN】使い込むほどに風格が増す、ロングライフな帆布バッグ -

洋服と同じように、バッグも着こなしの大切な要素。帆布バッグも、カラフルでファッショナブルなものから、機能性重視の武骨なものまで幅広いものが売られています。今回ご紹介するPLAIN(プレイン)のバッグは、後者のタイプ。業務用鞄のノウハウを凝縮したヘビーデューティな作りは、思いっきりラフに扱っても壊れない耐久性を備えています。

雑貨業界で注目を集める松野屋のオリジナルブランド

アトリエカタログでは、スタイルの異なるさまざまな作り手のバッグをこれまで取り上げてきました。しかし、堅牢な作りでは、プレインのバッグを上回るものは、そうないでしょう。

そのはず、プレインのバッグを手がける松野屋(1945年創業)は、もともと業務用の特注鞄の製造が専門。同店の3代目社長である松野弘さんは、大学卒業後、関西にある帆布バッグの有名店に弟子入り。帆布バッグ作りの基礎を習得した後、松野屋で自ら業務バッグの製作を担うようになります。

「つい先日も、証券会社からの注文で特大の荷物運搬袋を作ったところです。特殊な環境で酷使される業務用の鞄や袋物は、定型がないので、その都度、自分の頭で最適な形と構造を考えて作らなければなりません。特注といっても納品したら終わりではなく、耐久性と使い勝手を向上させるために、現場の声を次の仕事に反映させるようにしています」

そう語る松野さんが自らの集大成として立ち上げた帆布バッグのブランドがプレインです。2002年に発表して以来、従来の帆布バッグに満足できない通好みのブランドとして熱烈なファンを生み出しています。今回は、東京・浅草にある工房を訪ね、その確かな物作りを取材してきました。

バッグの内側に縫い付けられるプレインのロゴ。牛ヌメ革製で、バッグとともに経年変化を遂げる。

プレインは、松野弘さん(左)が満を持して立ち上げたブランド。右は、製作を一手に引き受ける鈴木さん。

デザインも構造も徹底してロングライフに

プレインのバッグの特徴をひとことで表すと、「徹底的にロングライフである」ということでしょう。松野さんは業務用の帆布バッグを数多く作ってきた経験から、長く使い続けると、どこがどんな風に傷んでくるかを熟知しています。

「以前、高速道路の料金所で使う集金袋を作ったことがあります。毎日、大量の硬貨を運ぶと、いくら頑丈な帆布でも擦り切れてきます。それで僕が考えたのが、幅50mmの布ベルトを半分に折り、上から牛革を巻き付ける補強法です。こうすれば、耐久性が格段に上がるし、傷んでも牛革だけを交換すれば済みます」

ほかにも、持ち手のリベット留め(金具と牛革のダブル補強)、外ポケットの二重縫いなど、現場で培ったノウハウが随所に生かされています。街歩きバッグとしてはオーバースペックともいえる作りですが、長く使っているうちに、これらは安心感へと変わります。

「何よりもこだわったのが生地です。プレインのバッグには、コーマ糸という細くて繊維の長い綿糸を撚って、高密度に織り上げた帆布を使っています。摩擦に強いのは当然ですが、湿気を含むと糸が膨張して水が染み込みにくくなります。この高級帆布にパラフィンをかけて、さらに撥水性を高めています」

擦り切れやすい持ち手は、二つ折りにした牛革で補強。傷んできても革の部分だけを変えて長く使える。

内側には、ポケットとペン差し、キーホルダーが備わる。持ち手のつけ根は、リベットと牛革で補強済み。

繊維が長いコーマ糸で織った高密度の綿帆布は、湿気を含むと糸が膨らみ、水を通しにくくなるという。

分厚い牛革と厚手の帆布を真っ直ぐに縫い合わせるには、熟練と馬力のある特注ミシンが必要。

カジュアルなトート、シックなショルダーの2つを用意

最高級の6号帆布、厚さ3.3mmの牛ヌメ革など、選りすぐられた材料をバッグの形に変えるのは、松野さんが絶大な信頼を寄せるバッグ職人。この道57年を超えるベテランが革の部材取りから、帆布の裁断、縫製までをこなします。

紹介するのは、「ワークトート」と名付けられた箱型のトートバッグと、「フィールドニューショルダー」と名付けられたショルダーバッグの2種類。どちらもSとMの2サイズがあり、黒とベージュの2色から選べます。

カジュアルな着こなしにマッチするワークトートは、大量の資料やワインボトルなどの重量物を持ち運ぶのに便利。内部は、2つの仕切りや大小のポケット、ペン差しがあり、小物の収納も万全。荷物が少ないときは、バッグの口をストラップで留められます。

ニューフィールドショルダーは、普段使いにしたいアイテム。シックなデザインは、服装を選ばず、飽きることがありません。Sサイズは、女性に人気があるそうです。

「僕が作りたいのは、ベストセラーではなくロングセラーのバッグです。だから、モデルチェンジはしたくないし、いつでも修理できる体制を整えています。使うほどに手に馴染む帆布の心地よさを知ってもらえるとうれしいですね」

時間をかけ、唯一無二の鞄を育てる楽しみを知る、息の長い物との付き合いをあなたも始めてみませんか。

写真は、Sサイズのトートバッグ(ブラック)。普段から荷物が多い人やノートパソコンの持ち運びにも便利。

トートバッグはマチ幅が十分にあり、収納性も十分。手を離しても自立するので、荷物を床置きできる。

Lサイズのショルダーバッグには、A4サイズの書類が入る。ショルダーストラップには肩当てが付属する。

Sサイズのダーバッグは女性に人気。英国調のデザインはアウトドアテイストの着こなしにもマッチ。