尾崎人形 カチガラス 大 歴史も表情も奥深い、鳥の郷土玩具

つぶらな目に、少しだけかしげた首。
尻尾から息を吹き込めば
「ホー ホー」と懐かしさを感じさせる
声で鳴くこちらの鳩の人形は、
佐賀県の伝統工芸品のひとつ。

「尾崎人形」は、佐賀県の尾崎西分地区に
伝わる焼き物の人形で、全国の陶磁器の
中でも特に古くからの伝統を残しています。

かわいらしい見た目とは裏腹に、
少し切ないエピソードがありまして、
元寇の際に捕虜になった蒙古軍の
兵隊が、人形を作って吹き鳴らし、
遠い祖国を偲んだのが
尾崎人形の由来と伝えられています。

こちらは「かちガラス」。
かちガラスとはカササギの別名で、
佐賀県の県鳥でもあります。
「かちかち（勝ち勝ち）」と鳴くので
大変縁起の良い鳥とされているんだそうです。
白いお腹と、ちょっととぼけたような
顔が特徴的です。

お部屋にそっと佇む姿は愛らしく、
目が合うと思わずほっこり。
一匹でもかわいいし、
大きさ違いで並べてもかわいいです。

実は尾崎人形は、唯一の継承者だった方が
2009年に亡くなられてから、
後継者がいない状態が続き、
一時存亡の危機に立たされました。

つくり手の高柳さん。

700年以上伝わる尾崎人形の文化を
途絶えさせまいと、高柳政廣さんが
人形作りをはじめられたのは、
御年62歳のとき。

土を型に詰め、笛になるように穴をあけ、
絵付けをする、という工程の全てを
手作業で行っているため、
たくさんの数をつくることはできません。
当店での入荷も不定期で、少量づつです。

それでも着実に、伝統を守りながら
ひとつづつ手作りされる人形たち。
全国で待っているお客様の元に、
一羽また一羽と飛び立っていきます。

見た目がかわいらしいだけではなく、
地域の歴史の一端を、手仕事の
あたたかさを通じて感じられます。
そんな奥深さがあるからこそ、
「郷土玩具」という枠を超えて、
多くの人に愛され続けるんだろうな、と
思いました。