日々の子育てから生まれた二つの形
福岡を拠点に活動するデザイナー長尾 朋貴さんが作る「きのこのうつわ」。昭和世代なら見た瞬間「きのこの山」(by明治)を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかしこの器、見た目をキャッチーにするためにキノコ型にしたわけではありません。子供用の食器というと、複数の小さな皿やカップがセットになったものも多い中、本当に使い勝手のいい、使用頻度の高い器はどれだろう?とデザイナー自身がお子さん用の器を吟味。厳選した2つを収納の際何気なく重ねてみたら、おっとキノコに見えるぞ、ということで、最終的にこの名がつきましたが、あくまで機能が先。3児の父である長尾さんが、自分の体験をもとにデザインし、実生活で奥さまやお子さんたちと使って、改良して、を重ねて誕生したプロダクトです。
一見ごくシンプルに見えるうつわですが、カップは底に厚みを持たせ、簡単に倒れないようなつくりになっています。皿の内側には「かえり」がつけられており、離乳食がすくいやすいなど、ちょっとした工夫には、デザイナー自身が子育てをしながら作ったことが伝わってきます。
実際、子育て真っ最中という友人らが「これ欲しい」と言ってくれたり、出産祝いに選んでくれるのを見て、長尾さん自身も改めていいものが作れたという実感を持てたそうです。
ほっこりとやさしいフォルムを作るのは大分の職人さん。木目の質感が映えるなめらかな形は、離乳食が終わった後も、食卓で薬味やご飯の供を入れたり、小物入れとして使うなど、末永く活躍してくれそう。このきのこ、いい仕事します。