東京生まれのファッション雑貨。台東区周辺の企業による、こだわりの靴・バッグ・財布・ベルト・帽子などを販売します。

tete(テテ)- 小さな発見と喜び、安らぎを日常に -

「美味しいかたち」をコンセプトとして掲げて作られる、食べ物をモチーフとしたバッグたち。どれも有機的なフォルムがかわいらしく、どこかほっとするような親しみと温かさを感じさせます。

果実が弾けた美味しい瞬間をバッグにした「袋果」シリーズ

果実が弾けた美味しい瞬間をバッグにした「袋果」シリーズ

こちらの「袋果(たいか)」シリーズは、裂け目のついた独特のデザインが特徴です。「袋果」とは、熟すと中から種が飛び出す、袋状の果実のこと。食べ時の美味しい果実が弾けおいしそうな香りを醸し出す、そんな瞬間をイメージしてつくられたシリーズです。

【インタビュー】ハンドメイドのバッグブランド「tete」

「tete」デザイナー・古田さんが作り出すのは、「食べ物」に発想を得て考えられたバッグの数々。
「食」と「バッグ」、一見つながりのないような言葉ですが、teteのバッグはその二つが違和感なく融合し、持つ人にすんなりと馴染みます。奇抜な発想でありながらも、使いやすい。そんなバッグがうまれた背景を、古田さんに伺ってきました。

「バッグづくり」との出会い

バイヤー畠田(以下 畠田):まずは古田さんがどのようにしてバッグづくりをするようになったのか、教えていただけますか?

古田さん:デザイン系の専門学校を卒業後、ユニバーサルデザインの会社に入社して、時計や文房具のパンフレットなどを作っていました。
それはそれで楽しかったんですが、プロダクトってたくさんの人が携わって出来上がるものだから、つくりたいものの理想があっても、一人の力では解決できないんですよね。次第に、もっと身近に感じられるものづくりがしたいと思うようになって、その会社を退職することに決めました。
そうして、次に勤めたのがハンドバッグを作っている会社です。

畠田:そこでバッグ作りに出会ったんですか?

古田さん:はい。この会社に出会っていなかったら今バッグづくりをしていなかったかもしれません。ミシンを触るのは小学校以来で、本当に一からのスタート。でも、学生時代にプロダクトデザインを学んでいたこともあって、工業製品の展開図をひいたりするのは得意だったので、型紙はすんなり作れるようになりました。
そうして基本を学んでいく内に、バッグに魅力を感じるようになって。どんどん「バッグ作りで独立したい」という思いが大きくなっていったんです。

古田さん:でも、ひとりでやっていくにはまだまだ実力不足。だから、縫製の教室に通うことにしました。台東区は革の職人さんが多いので、職人さん自らが貴重な技術を教えてくれるんですよ。そうやってしばらくは、仕事と縫製の勉強、両立しながらteteの構想を練っていました。

畠田:そしてようやく念願の「tete」始動、ですね。

古田さん:独立したのは5年前です。台東区のデザイナーズビレッジに所属して、今から3年前に本格的にteteのものづくりを始めました。

「自然の形」を大切にしながら日常使いできるものに

畠田:「袋果」の前の「ベジタブル&フルーツシリーズ」も特徴的ですよね。

古田さん:わたしは立体のものであればどんなものでもバッグにできるな、と思っているんですが、このシリーズもその延長線上で出来上がりました。例えば、ハロウィンの時にかぼちゃの中をくりぬいてお菓子を入れたりするじゃないですか?その素材が「革」になっただけ、というイメージです。

畠田:中でもモチーフが「野菜や果物」なのは何故なんでしょう?

古田さん:食べ物は有機的で面白い形のものが多いので、テーマにすることが多いんです。野菜や果物の形は、世界中で共通なところも魅力的だなあと思います。どんな人でも、親しみをもてて和めるようなバッグにしたいな、という気持ちがあるので。

畠田:確かに、インパクトがありますよね。持っていたら目を引きそうです。

古田さん:ベジタブル&フルーツシリーズは、見た目の華やかさから、お出かけやパーティーなど、ちょっと特別な日に使ってくださる方が多いようでした。

でも、お客様と直接お話する中で「もっと毎日使える形のものがあればいいのに」という意見を頂くことがとても多かったんです。A4サイズの書類が入らなかったり、日常使いには向いていない部分があったんですよね。それから次第に、通勤にも、カジュアルにも、毎日のように使っていただけるようなバッグも作りたいな、と思うようになりました。

畠田:使い手の声は何よりのヒントですからね。

古田さん:そうですね。自分の軸でもある「自然の形」というテーマは引き続き大切にしたかったんですが、物そのものの形をバッグで表現すると「使いやすさ」を兼ね揃えさせることは難しくて。どうやって共存させるか、とても悩みました。

使う人に寄り添った「袋果」シリーズ

畠田:そしてたどり着いたのが「袋果」のイメージだったんですね。

古田さん:はい。「果実が熟して弾ける瞬間」というコンセプトはしっかりとあるんですけど、使うシーンを想定しやすいように、まずはバッグとしての使いやすさを第一にして形を考えました。

畠田:バッグとしてはとてもベーシックな形になったように思いますが、古田さんのこだわりでもある「自然の形」というコンセプトはどういう部分に残っているんでしょう?

古田さん:実は、ランチトートやミニトートなどは、口の部分がまっすぐじゃなくて、少しだけ片側があがっているんです。果物ってひとつひとつ形が違いますよね。そんな「違和感」を感じてもらうために、あえて左右非対称にしています。

畠田:本当だ!実際手に持っていると言われないと気付かないくらいの差ですけど、バッグ全体の印象にはすごく影響していますね。

古田さん:あと、一番の特徴はやっぱりこの裂け目の部分。果物が弾けた時の裂け目をポケットという形で表現しました。ちょうどスマートフォンや定期券が入るようなサイズです。

古田さん:縫製は、果物の丸みを出すために「袋縫い」をしています。この縫い方だと、全体的にふっくらとした仕上がりになるんですあとは、バッグの中の布の色。果物って、スイカのように外見と中身の色が全く違うのが面白いと思うんです。そんな、中を開けた時の驚きのようなものも表現したいと思っています。

畠田:形や色、ひとつひとつに理由があるんですね。こうやって、つくり手の思いやコンセプトがきっちりと決まっているものほど、日常使いにするにはハードルが高かったり、使う側が歩み寄らなければいけなかったりするケースってとても多いと思うんです。でも、「袋果」シリーズは、きちんと軸がありながらも親しみやすさがあって、使い手に寄りそってくれる。そんなところが一番の魅力だと思いました。

古田さん:そう感じて頂けたなら何より嬉しいです。革も丈夫なので本当に毎日のように酷使しても平気ですよ!男性女性問わず、少しでも多くの方に触れて頂きたいですね。

古田佐和子

Profile古田佐和子ふるた・さわこ

1982年東京生まれ。
桑沢デザイン研究所プロダクトデザイン科卒業。
プロダクトデザイン事務所、バッグメーカー勤務後、プロダクトデザインを学んだ経験を活かし、2013年、「美味しいかたち」をコンセプトとしたコレクションを開始。