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ガラスに見る、陰影の美 - 【fresco】光の存在に気づかせてくれる、ハンドメイドのグラス -

「ガラスアートの世界をもっと身近なものにしたい。そのためには手作りのガラスを使ってもらうことが先決」

日本では、花が咲く季節になると、ガラスの器が食器売り場に並び始め、お盆の頃になると、ふたたび姿を消します。「ガラス=夏の器」という図式があるからです。そんな固定観念を打ち破るべく、斬新かつ温かみのあるガラス製品を作り続けている工房が「フレスコ」です。今回は、大阪府和泉市の山間にある工房を訪問。美の源泉を確かめてきました。

ガラスは1年を通して使えるもの 透明度の違いが無数の表情を生む

大阪南部の和泉中央駅からバスで揺られること30分。みかん畑に囲まれた道を15分ほど歩き進むと、色褪せた水色の建物が見えてきます。時折、ウグイスの鳴き声が聞こえるのどかな場所ですが、工房内に一歩足を踏み入れると、「静かな熱気」に包まれます。

吹き竿と呼ばれる長い管を使い、真っ赤なガラスに息を吹き込む・・・。一瞬の気も許せない作業にたずさわる職人の気迫もさることながら、1200度を超える窯(溶解炉)の熱が顔や肌へじんじんと伝わってきます。
「ガラス作りは、スポーツに似ています。全身を使って形を整えないといけないし、チームワークも必要。ガラスの温度を目で見極めたり、感覚的な要素も多い。長くやっているからといって、うまくなるわけではありません」

そう語るのは、「フレスコ」の代表を務める辻野剛さん(45歳)。2001年に職住一体のアトリエを目指し、家族とともにこの地へ移転。現在は22~34歳までの7人のスタッフたちと一緒に工房に立ち、吹きガラスによる色彩豊かな器やグラスを作っています。
「日本では涼感を得るためにガラスを使いますが、冬が長い北欧ではまったく逆です。光は温かさの象徴で、光をとりこむために窓際にガラスの小物を飾ります。夏には夏の、冬には冬のガラスがあることを知ってもらいたいのです」

実際、フレスコのグラスや器は、一見、ガラスとは思えないものが多いのが特徴です。あるものは陶器のよう、あるものは木目のよう。民芸ともヨーロッパスタイルとも違う、あえていえば「フレスコ流」。
「うちでは透明なガラスのほうが少ないんです。透明なガラスをゼロ、真っ黒なガラスを100とすれば、その間にあるいろいろな段階の透明度を楽しんでもらいたい。微妙な光加減、すなわち、陰影の美を感じ取れる感性が日本人にはあると思っています」

こうしたフレスコ独特の美の世界は、いかにして生み出されるようになったのか。その源泉は、辻野さんのアメリカ修業時代にありました。

プラスチックのリサイクル工場をリノベーションしたアトリエ。7人のスタッフが息の合ったチームプレイでガラス作りに取り組む。フレスコ特有の色鮮やかなガラスは、透明ガラスに色ガラスの粉末を重ねて、発色させている。最下段の写真は、代表の辻野さんが手がけたガラスのアートワーク。

ガラス工芸が浸透していない日本で どうすれば作品を見てもらえるか

辻野さんがこの世界に足を踏み入れることを決心したのは20歳のとき。兵庫県の大谷美術館で開かれた「世界現代ガラス展」で、海外作家の作品を間近で見たのがきっかけでした。
「展覧会で見たのは、完全なアートワークでした。ガラス工芸は実用品を作ることだと思い込んでいた僕にとって、まったく違う別の世界がそこに広がっていました」

そこで、「スタジオグラス・ムーブメント」(若手アーティストによるガラス工芸運動)に沸いていた80年代のアメリカに渡り、技を磨きます。中でもリノ・タリアピエトラ氏との出会いは、辻野さんの仕事に大きな影響を与えました。
「リノは、ベネチアガラスの技術を受け継ぐ、イタリア人のマエストロです。シアトルのガラススクールで彼の授業を受けたのですが、衝撃でした。作るもののスケールも、作業も自分が学んだものとはまったく違いました。たとえば、吹いたガラスを鉄板の上で転がして、成形したり、温度を調節する技法は、ベネチアガラス独自のもので、日本でも限られた工房でしか見ることができません」

アメリカ各地で5年間、経験を積んだ辻野さんは、91年に日本へ戻ることを決意。その3年後、縁あって和泉市のガラス工房に招かれ、プロとしてガラス工芸の道を歩みます。
「キャリアを重ねるにつれ、ガラスに興味のない人たちを引き込むには、何をすればよいか考えるようになりました。それには手作りのガラスを使ってもらうことが先決だと思いました。手にとった人が『このグラス、誰が作っているんだろう』と思って、底にあるサインを見る。そうしたら、その作家の個展にいつか足を運んでくれるかもしれません。そんな思いから、フレスコでは日常生活で使えるガラス製品に力を入れています」
「フレスコ的なるものとは何か」という問いに対し、辻野さんは、こう答えました。
「北欧的、イタリア的、日本的なもの、どれもあっていいと思います。あえていろんな要素を混ぜ合わせながら、それがひとつの空気感を醸し出す、その調和を目指しています」

炎が作り出す美しさには、ひとつとして同じものがない・・・フレスコの工房が都会ではなく、自然の中になければならない理由がわかりました。

ベンチなどの作業台を使い、熱したガラスを型を使わず、フリーハンドで吹き上げる「宙吹き」という技法を得意とするフレスコ。最近は、型に吹き込んで成型する「型吹き」のガラス製品も手がけている。最下段の写真は、辻野さんの仕事に魅せられ、自らフレスコの門を叩いた若き作家たち。

写真・文/菅村大全
辻野 剛

Profile辻野 剛つじの・たけし

1964年大阪府生まれ。デザイン専門学校を卒業後、渡米。ワシントン州の「ピルチャック・グラス・スクール」をはじめ、アメリカ各地のワークショップや工房でガラス工芸の技を磨く。94年に和泉市のガラス工房へ入社。2001年に独立し、ガラス工房「fresco」を設立。宙吹きによるガラス製品を制作する一方で、個人のアートワークにも精力的に取り組んでいる。

メッセージ

光はものに当たることでその存在を意識できます。光の反射が目に飛び込むことで、色が見えます。空気もまた目に見えませんが、空気の向こうに見えるもので空気が感じられる。フレスコのガラスが、皆さんの暮らしの中でそんな存在になることを願っています。

Brandfrescoフレスコ

ガラス作家、辻野剛さんが2005年に設立。「空気を醸し、光を見せ、存在を意識させる」ガラス製品を目指す。型に吹き込まずに成形する「宙吹き」という技法で作られた器やグラスは、ひとつひとつ模様やフォルムが異なる。ブランド名は、イタリア語で「新鮮な」という意味。大阪府和泉市にある工房には、カフェも併設。ガラス教室も開催している。

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「ソリト」は、イタリア語で「いつもの」という意味。「フレスコ」の世界に手軽に触れて欲しいと2008年から展開をスタート。溶けたガラスを竿で巻き取り、素早く整えて型の中に吹き込む「型吹き」の技法を使うことで、価格を抑え、サイズを均一化。スタッキング収納、買い足しも可能にした。カラーは、ホワイト、レッド、ベージュ、ブラウングリーン、ブルーの全5色。「歯を磨いたり、朝起きて水を一杯飲む。そんなときに気軽に使えるグラスを作りたかった」と辻野さん。型を使っているとはいえ、製作は手作業。型に吹き込んだガラスを冷ましてから、余分なガラスをバーナーの熱を当てて取り除く。最後に口当たりがやわらかくなるまで時間をかけて丹念に研磨すると完成。フォルムは均一だが、色ガラスの模様や透明度は一点一点微妙に異なり、ハンドメイドの味わいがある。専用の箱に入れてお届けするので、ギフトとしてもぴったり。