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丸ヨ(丸ヨ片野製鞄所)代表  片野 一徳 さん

「革のバッグは私にとって、キャンバスのような存在。この年だからこそ、既成概念をこえたバッグを作りたい」

ミシンよりも絵筆が似合うアーティスト――。それが片野一徳さん(63歳)だ。1970年代のアメリカポップアートから強い影響を受けたバッグ作りのベテランは、スタートさせたばかりの新ブランド、『丸ヨ』でも「ちょっぴりアート」を感じさせる作風を貫いている。

アートとレザークラフトのはざまで揺れ動いてきた

上の写真をごらんいただいてわかるように、
『丸ヨ』の片野一徳さん(63歳)は、
いかにも感じのよさそうな下町のおじさんだ。

インタビュー中に話しているときも
「こんな人が私のお父さんだったら、すてきだな」
とつい思うほど、やさしさが人柄からにじみ出ている。

使い込まれた革漉き(すき)機。バッグの製造は社外だが、サンプル製作は自社で行っている。

ところが、部下の倉田哲也さん(30歳)に
片野さんの、人となりについてたずねると、
意外な答えが返ってきた。

「片野社長はいつも新しいことばかり考えています。
だから、デザイナーと新商品の企画を打ち合わせると、
どんどん話が盛り上がっていく・・・。
社長が暴走しそうになるのを止めるのが、
自分の役目なんです。普通とは立場が逆ですよね(笑)」

「レザー」「アート」「日常生活」という相異なる3つのテーマを融合させる試みを続けている片野さん。

そんな片野さんは若いころ、画家を目指していた。
一枚革をキャンバスに見立て手彩色した作品を制作、
個展を通じて『レザーアート』という新分野を開拓した。
それでも作品の販売だけで食べていくのは難しく、
家業を手伝ううちに、バッグ作りに没頭するようになった。

繊細な感覚を持ち合わせた人の宿命だろうか、
片野さんは、何度も仕事で挫折しそうになった。
30代のころ、オリジナルブランドを立ち上げたものの、
1年で看板を下ろすという、つらい経験もした。

「アーティスト的な考えが強いんでしょうね。
初めて手がけたオリジナルブランドでは、
バッグの持ち手や金具までこだわりすぎて、
手が出ない値段になってしまいました。
店頭に置いてくれる店はありましたが、
結局、売り上げにつながりませんでした」

「新しい」ことがよしとされるアートの世界と、
実用性やコストが重要視されるメーカーの仕事。
その違いを痛感した片野さんは、
自らの感性にいったん封印をして、
アパレル企業からの委託生産の仕事を20年ほど続けた。

片野さんはこともなげにそういうが、心の奥底には
「商売の嗅覚(きゅうかく)が鋭く、売れないものは絶対作らなかった」
という父に対する畏敬(いけい)の念があったのかもしれない。

「姫路白なめし」という日本古来のなめし革を手染めしたバッグ。片野さんの繊細さを感じる作品だ。

60歳を過ぎて再び、創作活動の原点に戻る

革製品の業界では近年、個人の作家が増えている。
片野さんはバッグメーカーの経営者として、
彼らをどう思っているのだろうか。

「この業界は作り手の高齢化が進んでいるので、
若い作り手が現れるのは歓迎すべきことです。
バッグ作りの基本技術は、4、5年で身につけられますが、
目に見えない『奥義』は、なかなか習得できません。
自分は長年、職人たちの技を見て、そのすごさを知っています。
これからは職人の高度な技と、若い感性の橋渡しをすることが、
私が果たすべき役割だと思っています」

実際、部下の倉田さんも含め、
片野さんのまわりには美大系の若者が自然と集まるという。
確かにこれほど若手思いの経営者は珍しいかもしれない。

片野さんがレザーペインティングを施したバッグ。白くなめした革に刷毛で染料を塗り込み、風合いを出す。

そんな下町のアーティストが、
若いころの原点に戻るべく新たな取り組みを始めた。
創業者の名を受け継いだ新ブランド、『丸ヨ』だ。

どんな作品を発表するのかはまだ決めてないが、
まずは紙袋をモチーフにしたレザーバッグを皮切りに
キックオフしようと、片野さんはもくろんでいる。

「若いころにやっていたレザーペインティングを
今度は革のバッグをキャンバスにしてまたやりたい。
自分が作りたいものだけでなく、
若い作り手たちの感性もどんどん取り入れたい。
そこに『ちょっぴりアート』が感じられれば、
それが『丸ヨ』らしさじゃないかと」

芸術家は年を重ねるほど先鋭的になる人が少なくない。
片野さんがどんな創造性あふれるバッグを作るのか、
『丸ヨ』のこれからがとても楽しみになった。

取材・文/松本典子、撮影/横山新一、AD/柳悠介
片野 一徳

[Profile]片野 一徳 かたの・かずのり

1949年東京都生まれ。都内の高校を卒業後、美学校中西夏之アトリエにて絵画を学ぶ。その後、家業である丸ヨ片野製鞄所に入社。学生鞄の製造から一転、ハンドバッグのメーカーに転身を図り、国内有名ブランドの商品を数多く手がける。2006年にはプライベートブランドとして、日常の生活用品をモチーフにした『Vassel』シリーズを展開。2012年から伝統と現代をテーマにした『丸ヨ』ブランドに取り組んでいる。

メッセージ

現在、過去、未来の時空を自由な目線でかけめぐり、いまいるもの、いまを感じさせるものを、革素材をメインにお届けしたいと思っています。ものづくりの町、下町より・・・温故知新。

[Brand]丸ヨ マルヨ

丸ヨ片野製鞄所が2012年にスタートしたオリジナルブランド。『丸ヨ』は父の名前(片野義郎)の頭文字(ヨ)を丸で囲んだ昔風の屋号。バッグ作りの原点に戻ろうという意志が込められている。生産はすべて日本国内で行われる。

[Products]今回のご紹介アイテム

 丸ヨ片野製鞄所の最新ブランド『丸ヨ』の記念すべき第1弾は、手さげの紙袋をモチーフにしたレザーバッグ。身の回りの日用品を、革という題材で表現するのは片野さんの得意とするところ。「ちょっぴりアート」を体現したような作品だ。
 素材は東京の特産品である豚革。バッグの芯に紙を使うことで、クシュッとした紙のような質感を表現した。植物のタンニンでなめした豚革は手触りがやわらかく、使い込むほどに味わいが増す。
 一見、シンプルなトートバッグのようだが、持ち手を内側に折り畳み、革紐のストラップを引き出せば、ショルダーバッグに。バッグの上半分を折るとクラッチバッグに、というように3通りの使い方ができる。カラーは黒、キャメル、ベージュの3色をご用意。オールレザーでありながら、300gという軽さも魅力だ。

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